投資家は「テーマ型」が好き?(1)

2019年10月18日

今回は、「テーマ型のなぜ」を探っていきたいと思います。

 

テーマ型投資信託の「なぜ?」

 エコ、バイオ・ゲノム、クラウド・SNS、シェールガス、AI、などという言葉を最近よく聞きませんか?

新聞やテレビなどでもよく見聞きするこうした言葉は、時代の「旬」と言えるかもしれません。

 

こうした「旬」のテーマを取り扱う投資信託を、「テーマ型ファンド」といいます。証券会社のセミナースケジュールでも、「旬の話題」、
「マーケットの話題、注目銘柄のご紹介」、「今月の投資テーマ」という言葉の入ったセミナー名をよく目にします。

セミナーの開催者は、セミナーの題名にこだわります。題名は集客に影響を及ぼすため、言葉の端々まで気をつかうのです。
つまり、「旬」、「話題」、「テーマ」という言葉が、集客にアピールできるものであると金融機関は考えており、また実際にこの言葉で集客できていることがうかがえます。皆さんの中にも、証券会社や銀行などの投信販売会社に勧められて、または、「もうかりそうだから」と、テーマ型ファンドを購入された方もいらっしゃるのではないでしょうか?

中長期分散投資を訴えるセミナーでお話をした後、来場者の方から「今日は中長期分散投資についてよくわかりました。ところで、今の旬のテーマは何だと思いますか?」と聞かれることがあります。また、投資家の方々から保有している株式や投資信託のリストを提示され、どうしたらよいかと聞かれることもあります。ほとんどの場合、テーマ型ファンドを1つは保有されていて、その多くは時価が簿価を下回る「塩漬け」状態となっているケースも珍しくありません。


どうやら、日本人は「旬」、「話題」、「テーマ」という言葉に弱いようです。このテーマ型ファンドは、すべての成績が振るわないわけではありませんが、日本で販売されているテーマ型ファンドに運用成績の芳しくないものが多く存在しているのも事実です

テーマ型の投資信託が好まれるものの、成績が振るわない理由

テーマ型のファンドが好まれるものの、一方で成績が振るわないのはなぜでしょうか?考えられる理由を以下説明します。

 

(1)わかりやすい

日本で販売されているテーマ型ファンドは、非常にわかりやすいテーマが多いように思われますが、実はこれが一番の問題点だと考えます。
わかりやすいことがなぜいけないのでしょうか?

わかりやすいということは、その情報は既に世間一般が知っている情報だということです。
株価は景気の先行指標といわれますが、これは株価が将来を予想し、その予想を価格に先行して織り込んでいくからでしょう。つまり、皆が知っている情報では株価は上昇しません。
わからない未来に対して先行して反応するのが株価です。これは、「誰でも知っている情報は価値がない」ということを意味します。

つまり、価格に織り込み済みで既に上昇した旬のテーマに乗るのではなく、これから旬になりそうなテーマへ一足早く投資するということが必要なのです。

 

(2)販売しやすい

わかりやすいということは、販売会社にとってもメリットです。「売りやすい」ということになるからです。
販売する方も買う方もわかりやすいのですから、面倒な難しい説明抜きに、簡単に販売しやすい商品ということになります。
「たくさん販売したい商品=テーマ型ファンド」という図式が出来上がるのです。

 

(3)回転売買しやすい

お客さま本位の観点から金融庁が問題視する販売手法に回転売買があります。回転売買とは、投資信託や株式を短期間に乗り換えて(買い換えて)いくことをいいます。

回転売買はこれまで販売会社にとって、販売手数料を稼げる好都合な手法でした。新しいテーマが生まれれば、その新しいテーマのファンドに乗り換えてもらい、販売手数料を稼ぎます。

金融庁が奨励する中長期投資では、当然ながら販売手数料は頻繁には生まれませんので、販売手数料を主たる収益源としていた販売会社にとっては厳しい状況になるのです。

これもテーマ型ファンドが生まれやすい土壌といえるでしょう。

 

(4)皆が買っている

日本人はランキング好きではないでしょうか。
テレビや新聞などさまざまな媒体で、商品やサービスについて「今週のトップ10」のようなものがよく見られます。皆が買っている安心感や、流行に乗り遅れたくないという気持ちが反映されているのかもしれません。
映画や本など、多くの人が共感を覚える商品・サービスであれば、世間の評価は一定の基準となり得るでしょう。しかし、資産運用ではどうでしょうか?(1)で述べたように、先行指標としての株価では、「皆に知られている」「皆に好まれている」ということ自体が、「旬」が過ぎていることの証しになります。

販売会社の中には、お客さまが購入された投資信託や株式などのランキングを、売れ筋商品などとしてホームページに掲載しているところがあります。これは、「皆が買っている安心感」、「乗り遅れない」という人間心理に基づくマーケティングと捉えるべきであり、投資を検討する際の指標として見るべきではないでしょう。


(5) 分散していない

日本で販売されているテーマ型ファンドの多くは、非常に狭い範囲のテーマを扱うものが多く、その結果、業種が極端に偏っているファンドになります。業種が分散されていませんので、価格の変動性は大きくなってしまいます。

一部の「投資家」にとっては、この変動性が魅力的なのかもしれません。


(6)一度に買ってしまう

中長期投資向きのファンドであれば、何回かに分けてじっくり買おうという行動がとれますが、旬のテーマということは、急いで買わないといけないというインセンティブが働きます。結果として一度に投資してしまい、高値買いをしやすくなってしまいます。

 

(7)テーマ型の投資信託は「旬」遅れ?

投資信託が生まれるまでには時間がかかります。その投資信託の企画が立ち上がり、そこから商品概要の決定や運用商品としてのチェックがあり、販売会社や資金管理する信託銀行など関係者の選定、有価証券届出書など当局との手続きなど、最短で2~3カ月はかかります。

ここまで見たように、「旬」のテーマを捉えるのは、皆に知られる前に先行して投資すべきということでした。そうすると、投資信託の設定を企画するタイミングが、その旬に対して、いつのタイミングであるかは非常に重要です。

この旬の商品はヒットするだろうとの思いで企画されてから設定された商品では、設定されたタイミングが「旬」であっても、販売時点ではその旬のかなり後半ということになりかねません。


それではテーマ型ファンドはすべてだめなのでしょうか?そうではありません。

次回のコラムでは、テーマ型ファンドに投資する上での留意点と中長期運用のメリットについてお話ししたいと思います。

プロフィール

清水 暁(しみず あきら)

清水 暁(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー

住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。

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