常識を疑おう(実践編3)

2019年7月19日

今回は、前回のコラム「常識を疑おう(実践編2)」でもお話しした、TOPIX(東証株価指数)を取り上げます。皆さんもよくご存じの、日本株インデックスの中でも特に代表的なTOPIXについて、簡単なデータを見ながら掘り下げて考えてみましょう。

前回お話ししたとおり、TOPIXと日経平均ではパフォーマンスが大きく異なっていましたが、その要因は何でしょう?

日経平均が東証一部に上場している企業のうち代表的な225銘柄を対象とするのに対し、TOPIXは上場している全銘柄を対象とした株価指数です。TOPIXは、浮動株(安定保有株ではなく、絶えず市場で売買されている株)調整後の全銘柄の時価総額を加重平均して算出します。TOPIXと日経平均の一番の違いは、対象銘柄といえます。

TOPIXが算出対象とする全銘柄についてデータで分析すると、日経平均との違いが見えてきますので、その観点から分析してみましょう。
なお、TOPIXは配当を考慮していないため、ここでは構成銘柄の配当を考慮した配当込みインデックスで分析します。

(1) 構成銘柄の規模とリターン

TOPIXの構成銘柄は、全銘柄で2,000銘柄以上あり、東証一部上場企業とはいえ、その規模はさまざまです。

次のグラフは、過去3年・5年・10年のTOPIXのパフォーマンスと、構成銘柄の規模別のパフォーマンスを示したものです。各期間ともほぼ似た傾向にあり、「Core30」のパフォーマンスが、いずれの期間でも指数全体を下回っていることがわかります。「Core30」とは、時価総額・流動性の特に高い30銘柄を指します。
リスク・リターンの異なるさまざまな資産を効率的に組み合わせるのが資産分散の基本ですが、観察期間の結果だけから見ると、Core30は分散投資の効果も見られず、各期間において全体パフォーマンスの足を引っ張っています。

過去3年・5年・10年のTOPIXのパフォーマンスと、構成銘柄の規模別の規模のグラフ

過去3年:2016年5月~2019年4月
過去5年:2014年5月~2019年4月
過去10年:2009年5月~2019年4月
Core30:TOPIX算出対象のうち、時価総額、流動性の特に高い30銘柄
Large70:Core30に次いで時価総額、流動性の高い70銘柄
Mid400:中型株、Large70に次いで時価総額、流動性の高い400銘柄
Small:小型株、上記500銘柄を除いた銘柄

(2) 構成銘柄の業種別構成とリターン

次に、業種別のパフォーマンスについて見てみましょう。

次のグラフは、過去3年・5年・10年の、時価総額構成比率の高い5業種について、パフォーマンスを比較したグラフです。規模と同様、各観察期間のパフォーマンスにおいて、TOPIX全体を下回る業種が硬直的であることがわかります。銀行と輸送用機器の2業種です。

過去3年・5年・10年のTOPIXのパフォーマンスと、構成銘柄の規模別のパフォーマンスのグラフ

業種については、時代の変化による移り変わりもあります。この5業種の構成比率の推移も確認してみましょう。

業種別時価総額構成比(%)

2019年4月時点において構成比率の高い順に並べると、次のようになります。

順位 業種 特徴
第1位 電気機器 3年前までは低下していましたが、現在は10年前とほぼ同じ構成比率です。電気機器はITバブルの1999年末には20%を超えていた時期もありました。
第2位 情報・通信 この10年間は上昇傾向ですが、最近では伸びが鈍化しています。ITバブル時は14%を超えていました。
第3位 輸送用機器 5年前をピークに低下方向です。
第4位 化学 上昇傾向で、過去最高水準となっています。
第5位 銀行 大幅に低下しています。バブル崩壊前後の1980年代後半から1990年代半ばまでは、20%以上の構成比率を保っていましたが、その後はジリ貧が続いています。

観察期間のすべてにおいて全体のパフォーマンスに劣る「銀行」、「輸送用機器」の構成比率が、低下傾向であることもうなずけます。

(3) 時価総額上位銘柄の傾向

最後に、個別の組み入れ銘柄を分析してみましょう。TOPIXは時価総額の加重平均で算出されるため、時価総額(浮動株調整後)の高い銘柄の影響が大きくなる傾向にあります。そこで、時価総額トップ10銘柄の推移を見てみます。

トップ10の銘柄は、10年前・5年前・3年前、そして現在と、同じような銘柄群であり、変動が少ないことがわかります。加えてパフォーマンスを見てみると、TOPIXを下回った銘柄が少なくありません。

時価総額順位 09/04 10年間リターン(%) 14/04 5年間リターン(%) 16/04 3年間リターン(%) 19/04
1 トヨタ自動車 130 トヨタ自動車 46 トヨタ自動車 35 トヨタ自動車
2 三菱UFJFG 37 三菱UFJFG 17 三菱UFJFG 16 ソフトバンクG
3 本田技研工業 39 ソフトバンクG 57 NTT 4 三菱UFJFG
4 キヤノン 55 本田技研工業 6 ソフトバンクG 96 武田薬品工業
5 NTT 242 三井住友FG 20 KDDI -12 ソニー
6 パナソニック -18 みずほFG 5 日本たばこ産業 -36 キーエンス
7 東京電力HD -72 NTT 87 三井住友FG 33 NTT
8 三井住友FG 70 日本たばこ産業 -8 本田技研工業 14 三井住友FG
9 任天堂 68 ファナック 30 みずほFG 16 本田技研工業
10 ソニー 126 キヤノン 19 武田薬品工業 -13 みずほFG
  TOPIX(配当込) 138 TOPIX(配当込) 55 TOPIX(配当込) 29  

(色を変えて表示している銘柄は各年限でTOPIX(配当込)のパフォーマンスを下回る銘柄)

規模別・業種別にデータを見てきましたが、トップ10銘柄を見ていると、その「硬直性」の要因が浮かび上がってきませんか?10年間、トップ10の顔ぶれにほとんど変化がなく、業種別でも特にパフォーマンスが悪い銀行業の代表格であるメガバンクもそろい踏みしています。

これらのことから、大胆かもしれませんが、ある仮説が考えられます。

TOPIXは日本の主要上場企業を網羅している指数ゆえ、日本全体における産業の硬直化の影響を大きく受けてしまいます。硬直化の代表が銀行業です。TOPIXが日経平均に比べてパフォーマンスが劣後している要因は、この辺りにあるのではないかという仮説です。

では、日本経済の成長に期待する場合に、日本株式市場の代表的なインデックス(たとえばTOPIX)を購入するという投資戦略について、今後はどのように考えたらよいのでしょうか?そもそも、経済の成長とは何でしょうか?

ある経済学者によれば、経済成長には次の3つの要因が必要といわれています。

A.労働投入量(人口の増加)
B.資本投入量
C.技術進歩などの「全要素生産性」(質的な成長要因)

少子高齢化の最先端を行く日本において、A.労働投入量は、今後移民政策の推進などに大きくかじ取りをしない限り期待できません。そこで日本の経済成長のためには、C.の全要素生産性、イノベーションなどの創造性が期待されるといってもいいかもしれません。

では、この全要素生産性をどう見立てるか、そこが難しいのですが、ここにヒントがあります。
2019年6月21日、IT企業を中心とし、楽天株式会社の三木谷浩史社長が代表理事を務める「新経済連盟」(以下「新経連」といいます。)は、上場している加盟会員企業の株価を指数化した「新経連株価指数」を公表しました。この指数の上昇率は、今年5月末時点で指数起算日の2012年6月1日対比で約4倍になり、同期間におけるTOPIXの上昇率の2.1倍を大きく上回ったということです。この指数が優れたものであるか否かの議論は別としても、新経連は、この指数を「成長企業が多く加盟する団体であるというメッセージを可視化したもの」と述べています。

皆さんは、既存の業種の代表的な大企業と新興の成長企業と、どちらが今後の日本経済の成長をけん引すると考えますか?
日本経済全体の成長に期待してTOPIXというインデックスを購入する場合、TOPIXがそれにふさわしい指数であるか日本の成長要因を踏まえ、今一度振り返ってから検討することも必要ではないでしょうか。

次回は、もう1つの代表指数「日経平均」を分析し、TOPIXとさらに比較してみたいと思います。

プロフィール

清水 暁(しみず あきら)

清水 暁(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー

住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。

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