常識を疑おう(実践編1)

2019年5月22日

今回のコラムは以前お伝えしたコラム「常識を疑おう」の実践編です。質問に答える形式で、実際のデータを示しながら解説をしていきます。
1回目は、「常識を疑おう(1)」で説明した「常識その1 信託報酬の安いファンドを買え」についてです。
では、次の質問について考えてみましょう。

質問1:日経平均株価(225種)連動のインデックスファンドを買おうと思います。ファンドの正しい選び方を教えてください。

A.信託報酬率を比べて、一番低いものを選ぶ。
B.信託報酬率とファンドの純資産残高をチェック、ファンドの純資産残高がある程度大きなファンドの中で、信託報酬率が一番低いものを選ぶ。
C.信託報酬率だけでは選べないので、過去の運用実績や評価会社の評価などを調べてから選ぶ。

答え:正しい選び方はCです。なぜ、A、Bではいけないのでしょうか?

Aの選択肢についての考え方にある、パフォーマンスと信託報酬率の関係を見ていきましょう。

単純に考えると、投資対象は同じ日経平均株価(225種)の投資信託なので、コストである信託報酬率が低いほど、パフォーマンスが良くなるように思えます。
投資の世界においては、長期の観点が重要なのは、言うまでもありません。10年間(2009年4月~2019年3月)のデータが取得できる日経平均株価(225種)連動インデックスファンドの25銘柄について、ファンドのパフォーマンスと信託報酬をグラフに示します。(ただし、信託報酬率は直近のデータです。途中で報酬率を下げた可能性もありますので、必ずしも対象期間中の信託報酬率ではないことにご注意ください。)

パフォーマンスと信託報酬の関係のグラフ

まず気が付くのは、同じインデックスとの連動を目指すパッシブファンドでも、意外とパフォーマンスにバラつきが見られることです。9%台の中でも、10%に近い方から9%に近い方まで結構な差があります。
次に、パフォーマンスと信託報酬の関係を見ると、年率9.7%までのファンドでは、おおむねパフォーマンスが高いものほど信託報酬率が低い傾向になることがうかがえます。しかし、9.7%を超えてパフォーマンス上位のものを見ると、必ずしも信託報酬率は低くなく、逆に高いファンドも見受けられます。これはなぜでしょうか?

日経平均株価(225種)などに連動するインデックスファンドの運用においては、ある程度の資産残高があれば、原則全銘柄を購入するため、銘柄選択によるパフォーマンスの差はほとんどありません。インデックスファンドの場合、そのパフォーマンスへの影響が大きいのは、現金管理です。
日々の設定解約状況による現金の流出入の管理や、解約に備えた現金の保有(当然、現金の比率が高まるほど、運用成果はインデックスとの連動が薄れます)や、そのギャップを埋めるための先物の活用の巧拙などがポイントとなってきます。
信託報酬が高いにもかかわらず、パフォーマンスが良いファンドの運用報告書を見ると、投資家の解約に備えてある程度の現金を保有しながら、先物の上手な活用により、インデックスとほぼ100%連動する運用を保っていました。先物の有効な利用がパフォーマンスを底上げしたと考えられます。
このように、単純なインデックスファンドであっても、運用内容等をチェックすることが重要なポイントなのです。

もう1つ、Bの選択肢について、パフォーマンスとファンドの純資産額についても見てみましょう。「純資産額が小さいと、ファンドが償還されるリスクが高くなるという問題のほかに、運用が安定しないのでパフォーマンスにバラつきが生じる。したがって、純資産額が小さいファンドは投資対象から除いた方が良い。」という記事をよく見かけますが、ここでは、純資産額の大小とパフォーマンスの関連について見ていきます。

下のグラフをご覧ください。上のグラフと同じ期間で、パフォーマンスと直近(2019年3月末)の純資産額の関係を表しています。純資産残高は直近の値なので、過去は純資産額が大きかったのに減少してしまったファンドなども存在する点には注意してください。

パフォーマンスと純資産額の関係のグラフ

たしかに純資産額が小さいファンドのパフォーマンスの差はバラつきが大きいようにも見えますが、ある程度大きいファンドでも、同様にパフォーマンスの差があります。純資産額の小さいファンドでも、純資産額の大きいファンドよりも高いパフォーマンスを発揮しているものもあります。このグラフからは、純資産額の大小とパフォーマンスの間には関連性がうかがえません。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
実は、個別の投資信託の純資産額を見ても、実際の運用残高の大小はわかりません。
投資信託では、運用の効率化のため、インデックスファンドの多くはファミリーファンド方式を採っています。実際に投資家の皆さまが購入する投資信託はベビーファンドといい、このベビーファンドの資産は、他の同様の運用目的のものとまとめてマザーファンドに渡して合同で運用しています。したがって実際の運用残高は、マザーファンドの純資産額ということになりますが、その純資産額の情報は一覧で把握する方法はなく、1つずつ丹念に調べてみるしかありません。

このように、単純に信託報酬率や純資産額だけではよりパフォーマンスの良いインデックスファンドを選ぶことはできないのです。
「信託報酬の安いファンドを買え。」ではなく、「信託報酬率だけでは選べないので、過去の運用実績や評価会社の評価などを調べてから選ぶ。」が答えであることがおわかりいただけたでしょうか。

プロフィール

清水 暁(しみず あきら)

清水 暁(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー

住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。

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