常識を疑おう(1)

2019年4月8日

投資信託や資産運用に関しては、いろいろな「常識」があります。世の中では、投資に関連する本やインターネット記事など、さまざまなところで「投資信託を利用するにはこの方法で!」と、つぎのような「常識」がもっともらしく主張されています。

常識その1 投資信託選びのポイントはコスト!信託報酬の安いファンドを買え。
常識その2 アクティブファンドは、インデックスファンドには勝てない。
常識その3 中長期投資には、インデックスファンドが向いている。
常識その4 投資のコツは複利効果!分配金を多く出すファンドに投資してはいけない。
常識その5 投資はリスクがつきものであり危険、投資信託もしないほうがいい。

しかし、実際には、常識と思われていることが、正しくなかったり、特定の条件の下でないと成り立たなかったりと、鵜呑みにしてはいけないこともままあります。今回は、投資信託・資産運用の「常識」について、さまざまな観点から検証、つまり疑おうと思います。

常識を疑おう(1)では常識その1からその3までを解説します。

常識その1 投信選びのポイントはコスト!信託報酬の安いファンドを買え。

皆さんは、100円ショップでの買い物と、ブランドショップでの買い物を、一緒に考えますか?100円ショップで買う商品は、基本的には安い商品で大量消費する商品です。反対に、ブランドショップで買う商品いわゆるブランド品は、高額でも買いたい価値のある商品です。
買い物は日常のことなので、私たちは慣れています。購入する「商品価値」を見極めて、価格が「高い」か「安い」かを判断するのは当たり前のことでしょう。

しかし、投資信託の購入では、投資信託の「商品価値」に関係なく、手数料や信託報酬、つまり「価格」だけで判断するのが「常識」になっているのです。どうしてでしょうか?

最大の理由は、投資信託のような金融商品は、買い物の「商品」とは違う、という直感的な思い込みからでしょう。買い物の「商品」であれば、その価値と価値との関連がわかりやすいのですが、金融商品の「価値」と「価値」とは何なのか、確かに分かりにくいと思います。
実際には、投資信託にも商品としての「価値」があり、その対価として購入手数料および信託報酬という「価格」があるのです。
投資信託の「価値」は、「運用成績」ですが、その「運用成績」は、実際に購入してみないと分かりません。将来の運用成績を知るヒントになるのは、過去の中長期の運用成績です。投資信託の運用成績は信託報酬を差し引いた後のものなので、運用成績を見ればそのファンドの過去の実力、つまり「価値」が分かります。ただし、分かるのはあくまでも過去の実力ですから、短い期間ではたまたまかもしれないので、中長期の実力を見る必要があります。

買い物で商品を選ぶ際には、同じ種類の商品を比較してより良い価値の商品を選ぶのが普通です。投資信託においても、良い価値のものを選ぶことが重要なのは同じです。
そのためには、過去の運用成績を比較することになりますが、投資対象の資産が異なれば、当然運用成績も異なります。全く違う運用対象のものを比較しても意味がありません。
とはいえ、同じ種類の過去のさまざまな投資信託の運用成績を比較することは、なかなか難しいのが現実です。その解決手段の1つとして、投資信託の評価会社による評価を参考にする方法があります。有名なのはモーニングスター株式会社による星の数で表す格付けで、たとえば、5つ星であれば、同じような運用資産に投資をしているファンドの中で上位10%に含まれる優良なファンドということになります。

買い物で商品価値の比較をするのと同じように、投資信託を選択するに当たっても、購入時手数料や投資信託の持つ「価値」を比較するという観点が大切です。「商品価値に関係なくコストに着目して、購入時手数料や信託報酬が安いファンドを買え。」という常識は、いかがなものでしょうか。

常識その2 アクティブファンドは、インデックスファンドには勝てない。

「インデックスファンド」とは、日経平均などのインデックスと同じような動きをする運用を目指す投資信託です。「アクティブファンド」は、独自の銘柄選択や資産配分により、そのインデックスを上回る運用成果を目指す投資信託です。

本来であれば、アクティブファンドの方が運用成果は良いはずですが、「インデックスファンドとアクティブファンドの運用成績の「平均」の比較においては、インデックスファンドの方が高い。」というのが「常識」なのです。また、ノーベル賞学者などによる投資理論によると、市場を上回る成績は中長期では上げられないはずだから、インデックスファンドが一番良いという考えもあるのです。
この常識は、常識その1の投資信託はコストで選ぶということとも関連しています。運用成績(価値)はインデックスファンドが一番良いのであれば、運用成績を比較する必要はありません。投資信託選びのコツは、ずばりコスト(価格)である購入時手数料や信託報酬となります。

この常識を唱える人は、金融機関に不信感を持っている人も多いようです。
販売会社が勧めるファンドはそもそも運用成績を比較できない新規設定ファンドであることが多いため、よくわからないアクティブファンドを売りつけられるよりも、平均以上の成績であるインデックスファンドを選択すれば良いという考えです。

しかし、本当にアクティブファンドは、インデックスファンドには勝てないのでしょうか?ファンドを選ぶのは困難なので、ほどほどに良いもので満足しなさい、優れたファンドを探すのはあきらめましょうとも聞こえます。

そもそも、インデックスファンドが平均以上であるとの考え方には大きな欠点があります。日本株の指標だけでも、日経平均とTOPIXがあり、さらにJPX日経400など、指標自体の改良が進められています。
また、市場は投資理論どおりに効率的なわけではありません。「現在、市場が効率的な状態になっています。」という新聞記事や投資情報を見たことはありませんよね。もちろん、インデックスファンドに負けているアクティブファンドもありますが、中長期的に市場全体を上回っている、つまり、勝っているアクティブファンドも実際には多数存在しているのです。

世界的に見ても、プロ投資家の運用手法の多くはインデックスファンドだからインデックスファンドが良いという人もいます。しかし、プロ投資家の代表である年金も、運用はインデックスファンドのみ、というわけではなく、アクティブファンドも活用しています。

誤解しないでいただきたいのですが、「インデックスファンドよりもアクティブファンドが良い」ということでも「インデックスファンドだけで良い」ということでもありません。
大切なのは、視野を広くすることで、「インデックスファンドもアクティブファンドも、それぞれの良い点を踏まえて活用する」方法もあるということです。
年金のような巨大投資家は、運用資産が大きすぎて市場全体を買う以外の投資が困難と言う現実から、「クジラ」と呼ばれているのはご存知ですか?「クジラ」よりむしろ私たち「メダカ」のほうが自由自在に動けるので、「クジラ」を真似する必要は無いですし、当の「くじら」も、ちゃっかり広い視野で、インデックスファンドもアクティブファンドも、それぞれの良い点を踏まえて運用しているのです。

「アクティブファンドは、インデックスファンドには勝てない。」という思い込みにとらわれず、視野を広くすることも大切です。

常識その3 中長期投資には、インデックスファンドが向いている。

中長期投資をするには、コストの安いインデックスファンドを買えば良いという「常識」です。しかし、この常識が成り立つには、重要な前提条件がいくつかあります。

1つは、投資する市場が、継続的に右肩上がりであるという条件で、もう1つは、投資する市場の収益を享受するには市場全体に投資するのがベストな選択であるという条件です。

インデックスファンド投資にもブームがあります。アクティブファンドではテーマ株ファンドなどのブームを聞いたことはあるけど、インデックスファンドではブームなんてない。と思われていませんか?
インデックスファンドが一番ブームになっているのは米国ですが、日本でも最近ブームになっています。日本では、1980年代後半に第一次ブームがありました。ブームには共通点があり、すべて「株式市場が継続的に右肩上がりである時期」なのです。

高くなったと判断して売却した株式が、その後もさらに上昇し続けて後悔することがあります。株価が上昇し続ける局面、つまり継続的に右肩上がりである条件下では、後で振り返ると、市場並みの運用成績をあげておくのが一番良かったと投資家は考えるようになり、インデックスファンドがブームとなります。
逆に市場が下がり続ける局面では、長く持てば持つほど損失が拡大するため、インデックスファンドを中長期で持ち続けるほど分の悪い投資はありません。1989年の日本株式最高値以降、日本の株式市場は、長期にわたって低迷を続けました。この間に、日本の株式投資家は、「少し株価が上昇したら売却する、長く持ちすぎない」、という市場で生き抜く「知恵」を身に付けました。日本で未だに中長期投資が根付かない原因は、販売会社のせいだけではなく、20年にもおよぶ経験則が中長期投資を拒否しているからなのです。アベノミクスにより日本株がブームになった当初、経験則が身についている投資家ほど、市場の値上がりに付いていけず、その結果、インデックスファンドのブームが復活したとも言えます。

もうひとつ、投資する市場の収益を享受するには市場全体に投資するのがベストな選択である、という条件についても考えてみましょう。
上昇が続く米国の株式市場では、株式市場の代表的な指標の1つであるNYダウ指数はたったの30銘柄の厳選された長優良株で構成されています。そして昨年、米国の代表的な企業であるゼネラル・エレクトリック(GE)が構成銘柄から外れました。GEといえば、米国を代表する企業ですが、昨今は業績低迷もあり、新しい企業に構成銘柄の座を譲ることになったのです。このように、NYダウ指数は30銘柄でありながらも大きく構成銘柄を組み換え、米国経済の成長を享受しやすい仕組みになっています。日本の株式指標も、構成銘柄の入れ替えはありますが、米国ほどダイナミックなものではありません。

また、先に述べたように、どの指標が市場を正しく反映しているかどうかという問題もあります。日経平均とTOPIXでは、そもそも構成銘柄を選択する仕組みが違い、実際、日経平均とTOPIXでは、構成銘柄の構成比率も全く異なります。
さらに、一言で株式市場といっても、大型株式市場から新興株式市場までさまざまです。時期によって、大型株式市場や新興株式市場などでパフォーマンスも異なります。

債券市場でも、資金調達が必要の無い優良企業はそもそも債券発行をしないので、市場全体を買うということ自体の意味を考える必要があります。
つまり、インデックスを選択するのは意外と難しいのです。

「中期投資には、インデックスファンドが向いている。」という常識も、さまざまな特定条件の下でないと成立しない、ということがお分かりいただけたでしょうか。

プロフィール

清水 暁(しみず あきら)

清水 暁(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー

住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。

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