常識を疑おう(実践編4)
投資信託には注意いただきたい事項があります。くわしくは「投資信託の注意事項」をご覧ください。
~今回のコラムのポイント~
・日経平均株価とTOPIX(東証株価指数) - インデックスによって性質は大きく異なる?
・日経平均の組み入れ銘柄推移から見るインデックスの問題点は - 値がさ株への偏重?
・「とりあえずインデックス」の危うさ - 各インデックスの特徴を知ることが重要
今回は、前回のコラム「常識を疑おう(実践編3)」で分析したTOPIXと、日経平均株価(日経225)を比較してみます。同じインデックスでも、性質が大きく異なることを確認しましょう。
なお、ここでは、構成銘柄の配当を考慮した日経平均トータルリターン・インデックス(以下、日経平均株価)を使って分析します。
(1) 構成銘柄の業種別構成
まずは、日経平均株価とTOPIXの組み入れ業種構成比の推移を見てみましょう。2019年4月時点での日経平均株価とTOPIXの業種別構成比は次のとおりです。
【業種別構成比、トップ5】

日経平均株価の構成比トップ5業種に輸送用機器と銀行を加えた7業種の、業種別時価総額構成比の10年間の推移は、下のグラフのとおりです。


(2) 業種別構成の違い
次に、過去10年間の各業種別構成比の動きについて、日経平均株価とTOPIXを比較すると、以下4業種について大きな違いがあることがわかります。

小売は日経平均株価では14.3%と圧倒的に高く、TOPIXとの差は10年間でますます広がっています。
銀行は両者とも低下傾向にありますが、日経平均株価では0.7%とかなり低いのに対し、TOPIXでは6.0%でいまだベスト5に入る状況です。
電気機器においては動きそのものが異なります。日経平均株価では低下傾向ですが、TOPIXでは変化が見られません。
一方で、情報・通信は時代を反映し、両者とも共通して増加しています。しかし、日経平均株価の11.4%に対しTOPIXは8.6%と数値にはかなり開きがあります。
このように両者の業種別構成比の違いが、パフォーマンスの差につながっていると考えられるのです。
(3) 時価総額上位銘柄の傾向
最後に、個別の組み入れ銘柄を分析してみましょう。
日経平均株価では、みなし額面で修正後の株価を元に算出されており、
値がさ株(1株あたりの株価が高い銘柄)が時価総額上位になります。この結果、10年間での時価総額構成比の1位は、株式会社ファーストリテイリングが不動の地位にあります。

トップ10の銘柄は、過去10年間同じような銘柄群で、変動が少ないことがわかります。この点はTOPIXと同様です。(前回コラムを参照)
しかし、パフォーマンスを見ると、日経平均を上回った銘柄と下回った銘柄(上表黄色ハイライト箇所)は半々で、上回った銘柄の中にはインデックスの何倍も上昇した大化け銘柄があることがわかります。
また、日経平均株価のトップ10銘柄が指数全体に占める割合は、10年前は26.6%、5年前以降は30%を超え、直近では35.8%とかなり高い比率を占めています。TOPIXでは、10年前19.6%、直近16.1%ですから、日経平均株価のトップ10銘柄比率がかなり高いことがわかります。
日経平均株価では銘柄数が225銘柄と、TOPIXの2,149銘柄(2019年8月29日時点)と比べて大幅に少ないことも原因の一つですが、日経平均株価ではトップ10銘柄の影響を無視できません。
このように日経平均株価とTOPIXは、同じ日本を代表するインデックスでも、
その性質は大きく異なることがわかったと思います。
「とりあえずインデックスファンドを買えばいい」という常識の大きな落とし穴は、
各々のファンドがベンチマークとしているインデックスにより、リターンは大きく
異なる可能性があるということです。
さらに目を凝らすと、日経平均株価とTOPIX以外にも様々なインデックスがあることがわかります(例:JPX日経インデックス400など)。より良いパフォーマンスを目指して、新しいインデックスも開発されています。最近では、インデックス運用にアクティブ運用の良さを一部取り入れた手法もあります。
インデックスファンドが投資には最適という常識に従って、インデックスファンドで運用をするなら、まずはそれぞれのファンドがベンチマークとするインデックスの特徴を理解することが必要です。
加えて、広くアクティブファンドとも比較してみるという姿勢も、必要なのではないでしょうか。
プロフィール

清水 暁(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー
住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。