知られざる年金の真実(2) 

2018年12月27日

幻の確定拠出年金改革

前回「第4回知られざる年金の真実」では、年金を自分で運用しないといけない時代になった経緯をお話しましたが、今回は、「でも、いきなり運用しなさいと言われても、運用なんてできないよ」という、ごくまっとうなご意見に対する世間の動きについてお話します。

いざ企業型確定拠出年金(DC年金)や個人型確定拠出年金(iDeCo)を始めて「さて、資金を運用してください」と言われても、どのように運用したら良いかわからない人も少なくないのではないでしょうか。確定拠出年金制度では、そのような人のための仕組みとして、初期設定商品(以下「デフォルト商品」といいます。)を決めることができます。つまり、加入者が商品を選ばない場合や選べない場合に備えて、あらかじめ規約で定められた商品で掛金が運用されます。このデフォルト商品は、預貯金等の元本確保型商品の割合が95.9%となっています(2016年度確定拠出年金実態調査結果)。その結果、(2018年3月末 確定拠出年金統計資料)DC年金の資産の51.5%、iDeCoでは60.1%が預貯金等の元本確保型商品になっています。

そこで思い出してください。前回のコラムは、「ちゃんと運用しないと年金額が足りない、預金で運用していただけでは、十分な老後資金は用意できません。」という話でした。
デフォルト商品では、積み立て不足の年金しか実現できない可能性が高いのです。

この確定拠出年金という制度は、もともと米国の制度を参考にしています。元祖、米国の確定拠出年金のデフォルト商品はどうなっているのでしょうか?

最も一般的なのは、「ターゲット・デート・ファンド」と言われるバランスファンド(株式や債券など複数の資産に分散するファンドのことをいいます。「ターゲットイヤーファンド」、「ライフサイクルファンド」ともいいます。)です。このファンドは、ターゲットとなる日や年(たとえば退職する年)を決めると、最初はリスクを高めにし、ターゲットが近づくにつれリスクが保守的になるように、株式や債券への投資割合を自動的に変更してくれるファンドです。
米国では、確定拠出年金で初めて有価証券の資産運用を体験し、運用について理解したという人が多いとも言われています。

ではなぜ日本はアメリカの真似をしないのでしょうか?2001年にDC年金制度が発足して16年が経過しています。実は、昨年、制度改革が議論され、デフォルト商品についても議論がされました。有識者会議での議論では、ターゲット・デート・ファンドのようなバランスファンドをデフォルト商品にすべきだという意見が出て、市場関係者の期待が高まりました。

しかし最終的には、デフォルト商品は引き続き元本確保型でもいいとする内容となりました。新聞記事によると、「投信に誘導した形で、もし運用損が出れば非難を浴びかねないと恐れた一部企業が「様々なルートで反対した」(関係者)」とあり、企業や労働組合の腰が引けたのがその理由のようです。

企業自らが投げ出してしまった年金運用、もし企業自らがまだ運用しているとしても、積み立て不足となるために行わないであろう元本確保型での全額運用を、従業員のデフォルト商品にしていることになります。

iDeCo については、りそな銀行や楽天証券などがデフォルト商品を投資信託とすると発表しましたが、企業が商品を選ぶDC年金には動きはないようです。DC年金では、従業員のために投資教育や継続教育が努力義務として位置付けられていますが、ことデフォルト商品の設計においては、従業員の退職後の年金不足の心配よりも、制度運営においてのトラブル回避が優先、と言っているようにも受けとれる話です。

さらに、DC年金やiDeCoでは、運用の成果に関わらず運営費用として手数料が徴求されますが、制度によっては、元本確保型の商品ではその手数料さえ賄えない場合があります。その場合には、年金を作るどころか、掛金の元本割れのリスクもあるということになります。
非課税のメリットも多い確定拠出年金制度ですが、利用にあたっては、資産運用などに関する正しい理解が求められるのです。

プロフィール

清水 暁 氏(しみず あきら)
明日クリエーション株式会社  代表取締役社長 

住友信託銀行、JPモルガン・アセットマネジメント等を経て、講師として独立し、自身の会社として明日クリエーション株式会社を設立。住友信託銀行では、マーケット部門でデリバティブディーラーや市場部門のミドルオフィス設立やプライベートバンキング部門設立、確定拠出年金部長や渋谷支店長他を歴任。現在は、FP協会のCFP・AFP向けプロフェッショナル研修をはじめ、資産運用・相続関連やファイナンシャルプラン、支店長・課長向けマネジメント等に関する研修講師として全国各地で講演を行っている。

eダイレクト預金口座をお持ちでない方

eダイレクト預金口座開設

投資信託のお申し込みには、eダイレクト預金口座が必要です。

eダイレクト預金口座をお持ちの方

投資信託口座開設および
ご利用開始までのお手続き

投資信託TOP