学費こそインフレに備えるべき

2018年06月15日

子どもが生まれたら早めに準備を始めたいのが「教育費(学費)」です。なぜなら、その教育費が2013年頃までのデフレをあざ笑うかのように上昇しているからです。

高い値上がり率で上昇し続ける教育費

図は、文部科学省が公表している国公私立大学の授業料等の推移から、国立大学と私立大学の入学年度の授業料等を抜粋したものです。日経平均株価がピークをつけた1989年度以降からのものになりますが、国立大学は52.5万円から81.78万円(2017年度)、私立大学は82.71万円から113.11万円(2016年度)に増加しているのです。上昇率は、国立大学が55.8%、私立大学が36.8%となっています。

その間、消費者物価はほぼ一貫して下落、2000年前後から日本銀行が大規模な金融緩和を行い始めた2013年までは、一時期を除き物価が下落するデフレだったのですから、教育費の上昇率はものすごい数値であることがわかるはずです。

教育費の準備といえば、現在もその中心は学資保険や預貯金になることでしょう。残念ながら、1989年当時の学資保険の予定利率が筆者の手元にないため、預貯金金利で代用して試算してみます。当時はさまざまな規制があったことから、銀行の定期預金の預入期間は最長3年、最も長いものが郵便局(現、ゆうちょ銀行)の定額貯金の10年でした。銀行の定期預金、郵便局の定額貯金共に3年以上に適用される金利は年3.64%(1989年4月1日時点)でした。仮にこの金利で毎月積立を行った場合、18年後(子どもが生まれ大学に入学する時)には、税引後の元利合計で1.327倍になったのです。国立大学の上昇には対応できていませんが、私立大学の上昇には概ね対応できていたのです。足下の金利状況を考えると「3.64%」もの金利は超高金利になりますが、20世紀の定期預金(定額貯金)金利では最も低い水準だったのです。

これからは物価の上昇に強い資産も組み合わせることが重要

過去30年弱で大幅に上昇した教育費。今後も過去と同じような上昇率で増えていくかはわかりませんが、デフレ下でも減少しなかったことを考えれば、今後も右肩上がりで増えていく可能性が高いと思われます。仮に学校へ支払う教育費が増えなかったとしても、塾へ通うなどの学校外の教育費が増えていることから、教育費全体では負担額が減ることはないと思われます。言い換えれば、教育費は今後も物価の上昇率以上に増えていく可能性が高いと認識したうえで、準備を行っていく必要があると言えるでしょう。

仮に2018年度中に子どもが生まれ、大学進学のために教育費の準備を始めたとしましょう。足下の預貯金金利、学資保険などの予定利率を考慮すれば、残念ながら教育費の上昇に追いつけない可能性が高いと思われます。これからの教育費の準備は、物価の上昇(インフレリスク)を考慮する必要が大切になるというわけです。 預貯金や学資保険だけで準備をするのではなく、プラスして物価の上昇に強い資産を組み合わせて準備を始めるとよいでしょう。

インフレリスクに強い資産の1つに株式がありますが、株式を積立方式で買い付ける方法(株式累積投資)は、分散投資を行いにくいうえ、取り扱う証券会社が少ないのがネックになります。積立方式で準備するのであれば、分散投資が行われ、かつ取り扱う金融機関も多い投資信託で積み立てるのが現実的と言えるでしょう。

参考までに共に文部科学省が公表している「幼稚園3歳から高等学校3年までの学習費総額」、「大学初年度納入金」も図版として掲載しておきます。

幼稚園3歳から高等学校3年までの15年間の学習費総額
区分 学習費総額 合計
幼稚園 小学校 中学校 高等学校全日制
すべて公立 634,881
(公立)

1,492,823
(私立)
1,924,383
(公立)

9,215,345
(私立)
1,444,824
(公立)

4,017,303
(私立)
1,226,823
(公立)

2,973,792
(私立)
5,230,911
(公⇒公⇒公⇒公)
幼稚園だけ私立 6,088,853
(私⇒公⇒公⇒公)
高校だけ私立 6,977,880
(公⇒公⇒公⇒私)
幼稚園及び高校が私立 7,835,822
(私⇒公⇒公⇒私)
小学校だけ公立 10,408,301
(私⇒公⇒私⇒私)
すべて私立 17,699,263
(私⇒私⇒私⇒私)

出所:文部科学省「平成26年度子どもの学習費調査」をもとに作成、単位=円

大学の初年度納入金
区分 初年度納入金額 入学金 授業料 施設設備費
国立大学 817.8 282.0 535.8 -
私立、文・教育 1186.5 253.8 759.9 172.7
法・商・経 1131.8 250.0 731.3 150.4
理・工 1412.2 252.2 989.2 170.7
2079.6 353.6 1436.2 289.7
医科 4923.5 1297.2 2554.1 1072.1
歯科 4394.9 611.3 3205.0 578.4
家政 1260.3 265.7 792.5 202.0
芸術 1678.2 266.1 1113.8 298.2

出所:文部科学省調べ、国立大学は2010年度、私立大学は2012年度
国立大学の授業料は、標準額、単位=千円

プロフィール

深野 康彦(ふかの やすひこ)
有限会社ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー

1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴29年(2017年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。BSジャパン「日経モーニングプラス」毎月1回出演。日経CNBC「夜エクスプレス」では水曜日のアンカーを担当。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。

主な著書
『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)
『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数
新著
『55歳からはじめる、長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版)
『本当は危ない あなたの毎月分配型投資信託』(ダイヤモンド社)

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