コラム
掲載日
2022.6.9

相続税の高い日本
富裕層は幸福な資産の承継をどう計画するべきか

Writer

株式会社ZUU

(画像=PIXTA)

日本の相続税は最大55%と、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も高い。海外に住むという手もあるが、国税当局による取り締まりは年々厳しくなっている。

「エステートプランニング(資産承継計画)」は、相続税の負担を減らすと同時に事業をスムーズに承継し、かつ遺された家族が幸福に暮らしていけるようにするための重要な計画だ。

エステートプランニングとは?

エステートプランニングは、遺言状や医療事前指示書、委任状の作成、信託の設定、慈善寄付の作成、未成年後見人・遺言執行者・受益者の指名、葬儀の手配など、広範囲な手続きを総合的にカバーする、財産管理および資産承継の方法だ。

通常、被相続人(遺産を遺す本人)から依頼を受けた財産管理・資産承継の専門家が、被相続人の資産状況や家族構成、個人的な希望・事業上の希望などを考慮し、ニーズに合わせた財産管理・資産承継計画を立案する。

あらかじめ綿密な計画を立てておくことで、万が一の事態が起きても家族や従業員が慌てることなく、自分の意志に沿って資産や事業を承継できる。信託や慈善寄付を活用すれば、節税対策にもなるので一石二鳥だ。

対策を行わないとどうなる?

資産承継対策を怠ると、以下のような問題が生じる可能性が高くなる。

遺産分割を巡る相続人同士の争い

被相続人が資産承継対策を行わずに亡くなったり、認知症や事故などによって意志を喪失したりした場合は、民法に従って相続人同士で遺産分割協議が行われる。遺産分割は相続人全員の合意がないと成立しないため、相続人同士が裁判で数年間争うといったケースも珍しくない。

遺産分割協議中は預貯金や株式、社債等の金融資産、不動産など、被相続人の資産は凍結される。協議が長引くと、家族は精神的なストレスだけではなく、経済的負担も抱えることになる。

事業承継問題

事業承継が絡む場合は、会社の経営に支障が生じるリスクもある。

例えば「長男を後継者に」と考えていても、遺言状や信託がない場合は法定相続分に従って事業用資産や株式が分割される。すると、長男が会社の支配権を握るのに必要な株式を取得できない可能性がある。

相続税問題

法人名義の資産は相続税の対象にならないが、個人の資産には相続税がかかる。相続税は、相続財産の合計が基礎控除額を超えた場合に発生する。

以下の表のとおり、税率は相続する財産が多くなるほど高くなる。

相続財産の金額 税率 基礎控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超3,000万円未満 15% 50万円
3,000万円超5,000万円未満 20% 200万円
5,000万円超1億円未満 30% 700万円
1億円超2億円未満 40% 1,700万円
2億円超3億円未満 45% 2,700万円
3億円超6億円未満 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

2022年4月2日時点の国税庁の資料をもとに株式会社ZUU作成

相続金額が500万円ならば相続税は50万円で済むが、3億円を相続した場合はその半分の1億5,000万円になる。

相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に申告・納税する必要があり、全額を現金で納付するのが原則だ。

ところが、2019年の国税庁の統計によると、すぐに換金できない財産(土地や家屋など)が相続財産の約7割を占めており、遺族が相続税の納付に窮するケースも多い。物納という制度もあるが手続きに時間がかかるため、生前の納税資金対策が重要になる。

企業経営者のタイプ別エステートプランニング

被相続人が企業経営者の場合は、家族だけでなく事業や従業員、取引先などにも影響するため、慎重に準備しなければならない。ここでは、タイプ別にどのようなエステートプランニングが必要になるか見てみよう。

中小企業経営者の場合

中小企業の経営者は承継者が経営の支配権を握れるように、自社株の適切な承継方法を優先して考える必要がある。相続税の支払いのために、遺族が自社株を売却することになれば、経営に大きく影響するからだ。

大企業経営者の場合

大企業のオーナー経営者となると、相続税も莫大な額になる。遺された家族が「相続税を払えない」とならないように、綿密な納税資金対策を講じる必要がある。

経営から退く際は資産の売却や生前贈与、不動産の売却・購入などを検討したほうがよいだろう。

現金が多い経営者の場合

資産に占める現金の割合が大きい経営者は、相続税の納税資金や家族の生活費などを確保し、生前贈与や生命保険への加入などを検討する必要がある。

非上場株式の評価額が高いオーナー経営者の場合

非上場株式の評価額が高いオーナー経営者は、相続税の納税資金を確保する準備が必要になる。非上場の株式は流動性がないため売却して納税資金をすぐに確保できないので、事業承継税制などの活用が重要になる。

エステートプランニングは誰に頼めばよい?

前述の通り、エステートプランニングは財産管理・遺産承継の専門家に依頼して準備を行う。

会計士や税理士、弁護士、ファイナンシャルプランナーに相談しつつ、成年後見人や被相続人の代理として意思決定を行う代理人、保険中立人なども検討しなければならない。

日本にも富裕層向けに総合的なエステートサービスを提供するプライベートバンクや信託銀行があるので、「資産管理を見直す機会」という気持ちで相談してみるとよいだろう。

財産と想いを確実に次世代に

一生懸命働いて築いた財産と想いを確実に次世代へと承継できるかどうかは、早期に適切なエステートプランニングを行うかどうかにかかっている。

エステートプランニングを立てた後は、定期的に相続対策を見直すことも大切だ。

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株式会社ZUU

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