コラム
掲載日
2022.3.31

厚生年金、iDeCoにも影響が… 知っておきたい2022年の年金法改正ポイント

Writer

経済エッセイスト

井戸 美枝 氏

今春、年金制度の大改正が始まります。

寿命が延びたことで、退職後に必要なお金も増えました。「60歳で退職し、年金で生活する」といった、かつてのロールモデルはもう通用しないでしょう。

長くなった老後に対応するため、年金の制度も変わりつつあります。

本コラムでは、多くの人が関係するであろう「厚生年金」と「iDeCo」にまつわる改正をピックアップします。老後の備えを手厚くできる、この2つの改正。ぜひチェックしてください。

厚生年金の加入対象者が増える

まずは、厚生年金の改正を見てみましょう。

厚生年金に加入しているのは正社員の人だけではありません。パートやアルバイトなど非正規雇用の人も加入するケースがあります。

具体的には、「1週間あたりの労働時間が20時間以上」「月収8万8,000円以上」「従業員500人超の企業に勤務していること」「勤務期間が1年以上見込まれていること」。これらの条件を満たすと、厚生年金へ加入することになります。

このうち、「勤務先の従業員数」と「勤務期間」の条件が、順次改正されます。

図 パート・アルバイトの厚生年金加入条件の改正点
  現在 2022年10月以降 2024年10月以降
従業員数 500人超 100人超 50人超
雇用期間の見込み 1年以上 2カ月超 2カ月超

上の図のように、勤務先の従業員数が、2022年10月以降は「100人超」、24年10月以降は「50人超」となります。これにより、厚生年金の加入者は65万人増える見通しです。

加えて、2022年10月以降は、勤務期間の見込みが「1年」から「2カ月以上」に引き下げられます。

扶養内で働く人 が影響を受ける可能性あり

この改正で影響を受けるのは、やはり会社員とその配偶者がパート・アルバイトの世帯でしょう。

パート・アルバイトで働いている人のうち、結婚していて、配偶者が会社員の場合は、年収が106万円を超えないように勤務時間を調整している人が多いかもしれません。

年間の収入が106万円を超えると、厚生年金や健康保険に加入、その保険料を支払うことになり、手取りが減ってしまうからです。

現行の制度(2022年3月現在)では、勤め先の企業の従業員数が500人を超えていなければ、年間の収入が106万円を超えていても厚生年金に加入する義務はありません。

が、2024年10月以降は、従業員数50人超の企業で働いている人も、この「106万円」が関係してくることになります。

そもそも、106万円を超えないように働く方が良いのか、気にせず働いた方が良いのか。もちろん、その答えは人それぞれの事情によって異なります。が、基本的に筆者は厚生年金への加入をおすすめしています。

以下では、厚生年金に加入するメリットをいくつかご紹介しましょう。

厚生年金加入のメリット1

メリットの1つ目は、厚生年金に加入すると、将来受け取る年金額が増えるということ。

たとえば、月収が8万8,000円の人の場合、厚生年金の保険料は月額約8,000円(勤務先と折半)、年間の保険料は9万6,000円です。

一方の年金受給額は、働いた期間が1年であれば、月額450円が上乗せされます。年間の上乗せ額は5,400円ですね。つまり、約16年以上、年金を受け取ると、支払った保険料よりも多くの年金を受け取れる計算になります。

2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳。女性の場合は得をする可能性が高そうです。

メリット2 セーフティーネットが広がる

2つ目のメリットは、社会保険の保障が受けられるということ。

たとえば、病気やケガで障害を負ったときに受け取れる「障害年金」。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」がありますが、「障害厚生年金」は厚生年金に加入している人だけが受け取ることができます。

また、障害基礎年金には1級と2級しかありませんが、障害厚生年金には、さらに障害度の低い「3級」があります。障害を負ったとき、障害年金を受け取れる可能性が高くなります。

厚生年金ではありませんが、健康保険の保障も受けることができます。
健康保険には、ケガなどで休んだとき一定の条件で通算1年6カ月受け取れる「傷病手当金」や、産休中の収入減をサポートする「出産手当金」などがあります。

出産手当金は、出産予定日の42日前から出産翌日以降56日まで取得できる産前産後休業で休んだ日数分が支給されます。

このように、保険料を支払うことで、目先の手取りは減ります。が、保険に加入するメリットがあることもまた事実。

特に、厚生年金を含む公的年金は、一生涯にわたり受け取れます。つまり長生きすればするほど、その影響は大きくなります。寿命が延び、いつまで生きるかわからない現在だからこそ、年金は少しでも増やしておきたいところです。

将来のことも考えながら、検討してみましょう。

iDeCo 加入可能年齢・受給開始年齢が5年間延長

最後に、iDeCoの改正についても触れておきましょう。

iDeCoは、国民年金や厚生年金に上乗せする形で、自分で運用する年金制度です。積み立てた掛け金は60歳まで引き出せませんが、「掛け金が全額所得控除」「運用益が非課税」「受取時には控除あり」…といったメリットがあります。

そんなiDeCoですが、2022年5月に加入できる年齢が延長され、また、2022年10月以降は会社員でも加入できる人が増えます。

図 iDeCoの改正ポイント
  改正前 改正後
加入可能年齢の上限 60歳未満 65歳未満(国民年金か厚生年金に加入している必要あり)
企業型DCとの同時加入 企業型DCの規約変更が必要 企業型DCの規約変更が不必要に
受給開始年齢の上限 70歳 75歳

まず、2022年5月から、加入できる期間が「60歳未満」から「65歳未満」へと5年間延長されます。が、残念ながら、誰でも65歳まで加入できるという訳ではありません。というのも、iDeCoへの加入条件の1つに「公的年金への加入」があるからです。

たとえば、再雇用や継続雇用などで、60歳以降も会社員として働き、厚生年金に加入している人は、60歳以降もiDeCoへ加入できます(すでに加入している場合は継続することができます)。

一方、フリーランスや自営業者、扶養されている配偶者などは、原則、60歳以降に国民年金へ加入することはできません。

ただし、例外もあります。国民年金保険料を満額納めていない場合など、60歳以降も国民年金に「任意加入」できるケースがあります。国民年金に任意加入していれば、その間はiDeCoに加入することができます。

また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していれば、iDeCoに加入できるようになります。

あわせて、受け取り開始の上限年齢も「70歳」から「75歳」に5年間延びます。

先述しましたが、iDeCo内での運用益は非課税。運用できる期間が5年増えたことで、受け取り方の選択肢が広がります。運用を継続したい人にとっては大きなメリットでしょう。

ただ、運用期間中は口座管理手数料も必要となりますので、注意してください。定期預金など利回りの低い商品では、運用益よりも手数料の方が高くなります。

10月以降 会社員も加入しやすく

2022年10月には、企業型DCの加入者もiDeCoに加入しやすくなります。
現状、企業型DCを導入している会社では、その規約によって、iDeCoに加入できないケースがあります(企業型DCの規約を変更して、掛け金の上限を下げる必要があります)。

10月の改正以降は、上記の要件が撤廃され、企業型DCの規約を変更しなくとも、事業主の掛け金が拠出限度額に満たない場合は、iDeCoに加入して掛け金を拠出できるようになります。

企業型DCやDBなど、複雑な制度に思えるかもしれません。が、まずは、ご自身の勤め先の退職金制度をチェックしてください。そして、勤め先が企業型DCやDBを導入している場合は、その掛け金がいくらなのかを確認しましょう。掛け金が拠出限度額に満たない場合は、iDeCoに加入することができます(※)。

たとえば、企業型DCのみに加入している人は、事業主の掛け金が月額5万5,000円の拠出限度額に満たない場合、「2万円以内、かつ、事業主の掛け金とiDeCoに拠出する掛け金の合計が月額5万5,000円を超えない範囲」で、iDeCoに掛け金を拠出ができるようになります。

DB(確定給付企業年金)など、企業型DC以外にも加入している人は、事業主の掛け金が月額2万7,500円の拠出限度額に満たない場合に、「1万2,000円以内、かつ、事業主の掛け金とiDeCoに拠出する掛け金の合計が月額2万7,500円を超えない範囲」で、iDeCoに掛け金を拠出ができるようになります。

(※)企業型DCには、事業者だけでなく、加入者自身も掛け金を拠出する「マッチング拠出」という制度もあります。このマッチング拠出とiDeCoの併用はできません。マッチング拠出が可能な企業型DCの加入者は、マッチング拠出か、iDeCoへの加入か、いずれかを選ぶことになります。自分で運用したい場合は、iDeCoを選ぶと良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
本コラムでご紹介した改正によって、長くなった老後に備える「選択肢」が増えます。可能な範囲でかまいません。こうした制度を上手に活用しつつ、老後の資金を準備していきましょう。

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経済エッセイスト

井戸 美枝 氏

ファイナンシャルプランナー CFP®、社会保険労務士。
生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。
経済エッセイストとして活動し、「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。
近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)(別窓) などがある。

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