コラム
掲載日
2022.3.18

年金の基礎知識 老後の収入を確認 2022年の改正のポイントは?

Writer

経済エッセイスト

井戸 美枝 氏

年金をいくら受け取れるか、ご存じですか?

年金は、退職後の確実な収入源。リタイア後の生活費を支える「土台」ともいえる存在です。「退職するまでにいくら用意するか」など、ライフプランを立てる際にも大きく関わります。今すぐに知っておいても損はありません。

本稿では、年金の仕組みや、受給額を確認する方法、今年行われる改正など、知っていただきたい情報をご紹介します。

日本の年金制度は

まずは簡単に、年金の仕組みを確認しておきましょう。

日本の年金制度は、以下のようになっています。

日本の年金制度の図

図 日本の年金制度

自営業者・フリーランスや専業主婦(夫)などが加入しているのは「国民年金」のみ。会社員や公務員は、それに加えて「厚生年金」にも加入しています。

国民年金と厚生年金は、公的な制度「公的年金」です。一方の「企業年金」や「国民年金基金」「iDeCo」などは、個人や企業で加入する、いわば「私的年金」です。

ねんきん定期便・ねんきんネットで確認を

では、さっそく年金の受給額を確認してみましょう。
公的年金(国民年金・厚生年金)の受給額は、毎年誕生月に自宅に送られる「ねんきん定期便」、ウェブサイトの「ねんきんネット」、最寄りの「年金事務所」などで確認できます。

50歳以上の人の「ねんきん定期便」には、現状のまま、60歳まで働き続けた場合の「年金見込額」が記載されています。会社を離職したり、給与が大きく上下したりしない限り、記載されている受給額から大きく変わることはないでしょう。

50歳未満の人の「ねんきん定期便」には、「これまでの加入実績による年金額」が記載されています。
今後、保険料を納めることで、受け取る年金額は増えていきます。年齢が若い人ほど、記載されている金額と将来受け取る金額の差が大きくなります。

ウェブサイトの「ねんきんネット」では、細かな条件を設定して試算できます。
たとえば、60歳まで、現在と同じ条件で年金保険料を支払い続けると、受給額はいくら…といったシミュレーションができます。
今後の働き方や給与によって年金額は変わりますが、ある程度の目安はつけることができます。便利ですので、ぜひ活用してください。

企業型DCやiDeCoなどの「私的年金」は、加入している運営管理機関で確認できます。残高や運用状況は、ご自身の専用口座にスマホやパソコンからアクセスをすれば、いつでも最新情報を確認することができます。加入している運営管理機関から年に1回、積み立てた掛け金や運用状況などの「残高のお知らせ」がハガキなどで届きますが、あくまでも作成時点の情報ですので、ウェブの方が最新情報を確認しやすいでしょう。他に、コールセンターで確認することもできます。

2022年4月の改正 ポイントは?

最後に、2022年4月に行われる改正にも触れておきましょう。

2022年4月に行われる改正には、「受給開始年齢の上限延長」、「iDeCo、企業型DCの受け取り開始時期の引き上げ」、「在職定時改定」などがあります。これらの改正はどれも、長くなった高齢期に対応するためのものです。

本稿では、60歳以降のライフプランを考える際に大きなポイントとなる「繰り下げ・繰り上げ受給」に関する改正を取り上げます。

公的年金の受給開始年齢は「65歳」ですが、そのタイミングは自分で選ぶことができます。60~64歳に受け取り始めることを「繰り上げ受給」、66~70歳に受け取り始めることを「繰り下げ受給」といいます。

2022年4月の改正で、この「繰り下げ受給」の上限が、5年間延長され、「75歳」になります。
繰り下げ受給では、受け取りを1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金が増えます。仮に、70歳まで遅らせると42%、75歳まで遅らせると84%もの増額になります。

一方、繰り上げ受給を選ぶと、早く受け取れるメリットはあるものの、年金は減額されてしまいます。2022年4月の改正では、この減額率が「0.5%」から「0.4%」に縮小されます。

繰り下げ・繰り上げ 損益分岐点は

繰り下げ・繰り上げ受給は1度選択すると、変更することができません。減額率や増額率は一生涯固定されるため、慎重に選びたいところです。

公的年金は亡くなるまで受け取れる「終身年金」です。つまり長生きリスクに備える保険です。遅く受け取り始めて増額された年金にするのが安心です。
でも、やはり気になるのは、「いつ受け取ればおトクなのか?」ということですね。

繰り上げた場合からみてみましょう。
上限の60歳まで繰り上げると、年金額は65歳受給開始と比べて「24%減少」します。年金の総受給額は、おおむね「81歳」で65歳受給開始に追い越され、その後差は広がっていきます。
63歳まで繰り上げると、年金額の減少率は「9.6%」、総受給額はおおむね「84歳」で65歳受給開始に追い越されます。

続いて、繰り下げた場合です。総受給額が上回るのは、受け取り開始後11年と11カ月です。
67歳まで繰り下げると、年金は65歳受給開始と比べて「16.8%増額」、「79歳」で65歳受給開始の受取額を上回ります。
70歳まで繰り下げると「42%増額」で、損益分岐点は「82歳」。75歳まで繰り下げると「84%増額」となるものの、損益分岐点は「87歳以上」になります。

2020年時点の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳。
特に女性は繰り下げ受給を選択した方が、有利に年金を受け取れる可能性が高いといえます。夫婦の世帯であれば、妻の年金だけ繰り下げておく、というのも1つの手です。

選択肢が増えた「受け取り開始時期」

では、年金はいつ受け取るのがベストなのでしょうか。その答えは人それぞれ異なります。

たとえば、60歳以降、再雇用・再就職で収入が下がり、日々の家計が赤字になる、住宅ローンの負債がある…といった場合は、年金を繰り上げて受給する選択肢もありえます。障害年金が受け取れなくなるなど他のデメリットもあるので慎重に判断したいところではあります。

反対に、資産があり家計に余裕があるのなら、あえて数年は自己資金の取り崩しだけで暮らし、繰り下げ受給による年金増額で将来の経済的余裕を確保する、という方法もあります。公的年金は保険でしたね。選択肢が増えたことを積極的に活用してみるのもいいでしょう。

寿命が延びたことで、高齢期の過ごし方も多様になりつつあります。
「65歳で年金受給スタート」というイメージは一旦忘れて、資産や負債などのそれぞれの事情に合わせて、受け取り時期を選ぶと良いでしょう。

まとめ (年金制度のメリットは大きい)

公的年金はなかなかメリットの感じにくい制度です。
働いている期間は保険料が天引きされ、いざ受給する際も生活費として日々使われるため、まとまった金額を目にする機会は、ほとんどありません。

ですが、仮に、世帯の年金額が月20万円とすれば、20年間で4,800万円、30年間で7,200万円の給付を受けることになります。もし年金制度が存在しなければ、私たちは上記のような金額を自前で用意しなくてはなりません。年金保険料の負担は軽くはありませんが、年金制度は私たちの老後を支える大事な仕組みです。

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経済エッセイスト

井戸 美枝 氏

ファイナンシャルプランナー CFP®、社会保険労務士。
生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。
経済エッセイストとして活動し、「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。
近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)(別窓) などがある。

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