コラム
掲載日
2021.10.29

遺言に書けること・書けないこと
~遺言事項とは~(後編)

Writer

遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道 氏

前編では、遺言事項(遺言に書いて法的効力を生じるもの)について解説しました。今回は、「遺言事項以外」について考えていきます。

「遺言事項以外」で相続に関すること

前編では「遺言事項」と「遺言事項以外」に分け、さらに後者を「付言事項に書けること」と「遺言以外で解決すべきこと」に分類しました。付言事項とは、遺言書の本文の他に、法的効力はないものの自由に書ける事柄をいいます。それでは、まず「付言事項に書けること」を見ていきましょう。

付言事項に書けること

付言事項に法的効力がなくても、書くことに何の意味も効果もないわけではありません。上手に活用することで、相続人の無用な混乱を避け、心を穏やかにできることもあります。遺言を書く目的には「相続人の争いを避ける」こともありますので、オマケ程度に書くのではなく、大事なポイントだと考えて書くことをおすすめします。

遺言を書くからには、完全に同じ割合で相続人に配分することはほとんどなく、多少なりとも財産配分に軽重があるものです。特に分割が難しい不動産などが財産に含まれる場合は、ほぼ確実に「不平等」な配分が発生します。仮に財産評価額でピッタリ同額の配分であったとしても、現金で分けない限り引き継がれる財産の内容は相続人毎に異なります。逆に、それぞれの家庭にはさまざまな事情がありますので、完全に平等な配分が「公平」とは限りません。

相続人は遺言を見た時に「どうしてこの財産を私に引き継いだのだろう」「なぜこの配分なのだろう」と思うのが自然です。その疑問に対する答えを付言事項に書いておくと、たとえ財産配分が少なくても納得感が得られやすいでしょう。なお、財産配分を少なくしたネガティブな理由を書くより、配分を多くしたポジティブな理由を書いた方が、受け入れやすいと思います。

また、相続人以外の人物や団体へ遺贈する場合も、その理由を記載しましょう。受遺者と相続人との間に起こりうる心情に対して配慮することも、円滑な相続には大切なことです。
さらに、家族やお世話になった方へ、感謝や御礼の言葉を書くのも良いでしょう。

遺言以外で解決すべきこと

前編でお伝えしたとおり、遺言で対応できるのは「遺言事項」だけです。相続における財産や身分などに関すること以外は、遺言では対応できません。その代表例が「相続に関する諸手続き」です。人が亡くなったときに必要な手続きは驚くほど多いものです。頼れる相続人がいればその方に任せれば良いのですが、相続人と疎遠な場合や誰も頼れる方がいない場合には、信頼できる専門家(弁護士や司法書士など)と「死後事務委任契約」を締結する方法があります。

主な死後事務の一般的な費用例は以下のとおりです(別途実費が必要です)。

病院・介護施設の退院・退所手続き 50,000円
死亡届の提出・埋火葬許可証の受理 30,000円
火葬・葬儀の代行手続き 100,000円~
友人・知人への死亡通知 1件1,000円~
埋葬・散骨の代行手続き 50,000円~
健康保険・公的年金の資格抹消申請  50,000円
住民税・固定資産税の納税 50,000円
住居明け渡し・賃料精算手続き 50,000円
住居内の遺品整理 50,000円~
公共料金の解約精算 60,000円または1件10,000円 
PC・携帯電話の情報抹消 50,000円または1件25,000円
SNS・メールアカウント削除 20,000円または1件10,000円
生命保険の請求 50,000円
ペットの引き渡し 50,000円~
死後事務委任契約書の作成 100,000円

これらの死後事務のうち、自分に必要なものを選んで契約することもできますし、専門家によってはいつくかの項目をパッケージにして契約することもあるようです。また、死後ではなく生前に関する手続きですが、財産管理等委任契約、任意後見契約、身元引受契約、見守り契約なども同じ専門家が取り扱っている場合がありますので、必要に応じて相談されるのも良いでしょう。

本来は生前に整理すべきこと

遺言事項の中には「非嫡出子の認知」「推定相続人の廃除」「祭祀主宰者の指定」「生命保険受取人の指定」など、遺言でなくても、生前に手続きできるものがあります。「嫌な思いをさせてしまう人がいる」「波紋・影響が広がることが怖い」などの理由から、手続きを先延ばしにし、ついには遺言に書いて「あとはよろしく」というケースがあります。しかし、残された人はたまりません。「生きているうちに言ってよ」と思うでしょう。

遺言事項でないことでも、生前に整理すべきことがあります。葬儀や埋葬は死後事務委任契約で手続きはしてもらえますが、葬儀社やお墓の手配は別途必要です。「墓じまい」が必要な場合もあります。また、先代の未分割財産(遺産分割協議が調っていない、または調っていても手続きしていない)、所在不明土地、未登記物件、隣地境界が不確定な土地、行方不明の相続人、関係の良くない相続人なども、残された相続人にとっては難題です。

終活と聞くと「断捨離」や「片づけ」のイメージがあり、それも大事なことですが、他にも整理すべきことがあります。すべてを解決することは難しいかもしれませんが、できるだけ対処しておきたいものです。なぜなら、いま解決できないことを遺言に書いても解決できないからです。

財産配分についても、遺言での配分を検討するだけでなく、生前贈与も視野に入れて検討することもできます。一方、特に財産を遺したい相手がいない場合には、遺贈寄付という選択肢がありますが、もし余裕があれば生前に少しずつ寄付することを考えても良いでしょう。

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齋藤 弘道 氏写真

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遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道 氏

みずほ信託銀行の本部にて遺言信託業務に従事し、営業部店からの特殊案件やトラブルに対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げ(後の全国レガシーギフト協会)。2014年に野村信託銀行にて遺言信託業務を立ち上げた後、2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」「非営利団体向け不動産査定取次サービス」等を次々と実現。

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