コラム
掲載日
2021.8.13

なぜ争族は起きるのか?
トラブルになりやすいポイント(前編)

Writer

遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道 氏

遺産相続をめぐる争い、いわゆる「争族」にはいくつかのパターンがあります。「こんな遺言は聞いていない」(遺言の問題)、「この財産は私がもらったもの」(生前贈与の問題)、「私はこれだけ尽くした」(寄与分の問題)、「家を売って平等に分けるべきだ」(遺産分割の問題)などがあります。なぜ「争族」は起こってしまうのでしょうか。その原因について考えていきます。

断片的な知識が誤解を生む

相続は、身近な人が亡くなった後に、遺産分割の話し合いや手続きをするものですから、相続人は喪失感や悲しみなどの感情を抱えた、普段とは異なる精神状態にあります。そこで過去の経緯を踏まえた議論がなされるのですから、ちょっとした言葉に反応して感情的になり、争いが発生しやすい状況です。

感情の問題とは別に、争族が起こりやすい原因があります。相続に関する知識が断片的なことです。相続は法律に基づいて相続人間の利害関係を調整する行為とも言えますから、その基礎となる法律を全体的に理解しておく必要があります。ところが、ほとんどの方は相続法等を網羅的には理解していませんから、断片的な知識で話し合うことになり、法律を無視した(悪意のない)主張が他者から非常識に見えることや、当事者間で合意しても法的に実現できないこともあります。こうしたことが重なると、相続人間で誤解や不信感が生まれ、争族に発展することがあります。このようなことにならないように、相続の基礎知識のうち、特に争いに結びつきやすい法律について見ていきましょう。

誰が相続の権利者なのか

遺言や信託、保険など、直接的に財産の受け取りを指定する場合を除き、被相続人が死亡した時点で、相続財産は民法で定められた「法定相続人」の共有財産となります。この共有状態を個々の相続人の独立した財産とするために、遺産分割協議でそれぞれの財産が相続人の誰のものとするのかを定めます。

法定相続人でない人に、相続財産を受け取る権利はありません。時々、法定相続人でない人(相続人の配偶者や子)が遺産分割協議に口を出し、混乱や争いの原因となることがあります。相続人が後見状態や未成年者等でない限り、原則として、当事者だけで話し合うべきでしょう。

法定相続人の範囲

常に相続人:被相続人の配偶者
第1順位:被相続人の子供
子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
第3順位:被相続人の兄弟姉妹
兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供(被相続人の甥や姪)が相続人となります。第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
法定相続人順位 説明図

法定相続分

順位 配偶者がいる場合 配偶者がいない場合
第1順位 配偶者 1/2 子供 1/2 子供 100%
第2順位 配偶者 2/3 直系尊属 1/3 直系尊属 100%
第3順位 配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4 兄弟姉妹 100%

子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。

法定相続分は、遺産を誰がどのくらい相続するかの目安を民法で定めたものです。必ずしも、この相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。相続人全員で合意できれば、どのような配分割合で分割しても構いません。

遺産の分割方法

現物分割
個々の相続財産を1つ1つ相続人に振り分ける方法です。
換価分割
相続財産を売却して金銭に換えてから、相続人に振り分ける方法です。
代償分割
相続人の1人が財産を相続する代わりに、他の相続人に対して自己の財産(代償金)を支払う方法です。
共有分割
不動産などの相続財産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。

「現物で分割できなければ全部換金して配分」という極端な議論ではなく、上記の分割方法を上手に組み合わせることで、争いを回避できることもあります。

相続人の地位を失う場合

相続人が「相続欠格」「相続廃除」「相続放棄」のいずれかに該当すると、相続権を失います。それぞれの内容と違いを見てみましょう。

相続欠格
相続人が被相続人を故意に死亡または死亡させようとした等の場合に、何ら手続きを要せずに、強制的に相続人の権利を失わせることです。ここで注意したいのは、欠格事由に「被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠蔽した者」があることです。遺言内容が気に入らないからと、遺言書を破いたり、燃やしたり、隠したりすると、そもそも相続人でなくなってしまいます。
相続廃除
遺留分(後述しています)を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待・重大な侮辱・著しい非行があったときに、被相続人が家庭裁判所に対して相続資格を失わせる請求を(生前にまたは遺言で)する制度です。
相続放棄
被相続人の死亡後3カ月以内に、家庭裁判所に申し立てすることで、相続の放棄をする制度です。申請が受理されると、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。

上記3つの相違点

代襲相続
相続欠格者や相続廃除者に子供がいた場合は、その子供が代襲相続人になりますが、相続放棄をした人の子供は代襲相続人になりません。
相続税
基礎控除額や死亡保険金の非課税枠を計算する際の法定相続人の人数に、相続欠格者や相続廃除者はカウントされませんが、相続放棄者はカウントされます。

相続放棄と相続順位

第1順位の相続人全員が相続放棄すると、第2順位の人が相続人になります。このときに、第2順位の相続人全員が相続放棄すると、第3順位の人が相続人になります。さらに、第3順位の相続人全員が相続放棄し、配偶者も相続放棄すると、相続人が誰もいないことになります。被相続人に財産を上回る債務があるような場合に、このようなケースがあります。

遺留分とは?

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障された、一定割合の相続分のことをいいます。遺言や信託、生前贈与などにより、財産が特定の相続人(または相続人以外の個人や法人)に極端に偏って配分された場合に、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使して、侵害分を取り戻す請求をすることができます。

遺留分の割合

遺留分の割合 説明図

遺言等で財産配分を指定した場合は、上記の円グラフのとおり、遺留分侵害額請求権の及ばない割合(白い部分)が最低でも1/2以上あります。遺言等がなければ、遺産がどのように分割されるかは相続人次第ですが、遺留分を侵害しない範囲であれば遺言者の意思が確実に実現されます。

遺留分の対象財産や時効などについては、次回に続きます。

Writer

遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道 氏

みずほ信託銀行の本部にて遺言信託業務に従事し、営業部店からの特殊案件やトラブルに対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げ(後の全国レガシーギフト協会)。2014年に野村信託銀行にて遺言信託業務を立ち上げた後、2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」「非営利団体向け不動産査定取次サービス」等を次々と実現。

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