コラム
掲載日
2021.3.13

最も幸福度の高い年収は?お金は幸せにどのくらい影響する?

Writer

株式会社ZUU

(画像=PIXTA)

お金と幸福の関連性についての研究は、これまで繰り返し行われてきた。世界的に有名なのは、ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマン名誉教授が2010年に発表した「幸福度が最も高い年収は7万5,000ドル(約786万円、1ドル=104.8円で試算。以下同)」という研究結果だ。

ところがコロナ禍の中、この説を覆す新たな研究結果が発表された。今回は最新の研究結果と共に、最も幸福度の高い年収を検証してみよう。

最新の研究結果「年収と比例して幸福度は上昇し続ける」?

カーネマン名誉教授の研究では収入と幸福度は比例して上昇し、年収7万5,000ドルをピークに横ばいになるという結果が報告されていた。

しかし、ペンシルベニア大学ウォートンスクールのシニア・フェロー(上級研究員)、マシュー・キリングスワース氏が2021年1月に発表した最新の調査では、ピークとなるポイントは見当たらず、年収と比例して幸福度は上昇し続けるという結果だった。異なる結果が出た理由は、3つ考えられる。

1つ目は指標の違いだ。カーネマン名誉教授の研究も含め、過去の研究は人生の総体的な満足度を含む「評価的な幸福」に焦点を当てたものが多かった。

一方、キリングスワース氏の研究は、3万人以上の雇用者(18~65歳)の日々の感情や幸福度を記録・分析し、「評価的な幸福」だけではなく、「瞬間的な幸福」にも焦点を当てている。参加者はアプリを通して、「今どのように感じているか?」「自分の人生にどの程度満足しているか?」といった質問に毎日数回回答した。

確かに「さっきまでは気持ちが弾んでいたが、今は憂鬱な気分」など、人間の感情は些細なことがきっかけで浮き沈みする。細かい幸福度の変化を知る上で、キリングスワース氏の研究はより効果的だといえる。

次に、カーネマン名誉教授の研究が実施された当時、世界は経済危機の真っただ中にあった。その影響から、米国の世帯年収は減少傾向にあり、それが幸福度の金額に影響した可能性が考えられる。

もう1つ、新型コロナウイルスの影響で人々のお金に関する価値観が変わったことも、考慮に入れるべきだろう。現在も世界経済危機と同じくらい、ある意味それ以上に先行きが不透明な状況だが、消費者の生活意識は2010年と大きく異なる。

万が一失業したり大不況に見舞われたりしても、お金があればある程度不安は軽減される。現在や将来に不安を感じ、日本でも家計を見直したり投資を始める人が増えているのが何よりの証拠だ。これが3つ目の理由である。

日本は年収中央値の約5~7倍が幸福度のピーク?

次に日本のお金と幸福度の関連性を探る目的で、内閣府が2020年9月に発表した「満足度・生活の質に関する調査による第4次報告書」を見てみよう。回答者の資産状況に対する満足度と総合主観満足度を、0~8点で測定している。

この調査では、幸福度(=総合主観満足度)のピークは年収2,000万円~3,000万円。日本の世帯年収の中央値である437万円(厚生労働省「国民生活基礎調査2019年」データ)の約5~7倍に匹敵する。カーネマン名誉教授の研究より、年収による幸福度のハードルが遙かに高くなっていることは明白だ。

カーネマン名誉教授の研究が発表された、2010年の米国の世帯年収中央値4万9,445ドル(約518万円/アメリカ合衆国国勢調査局データ)から算出すると、幸福度が最も高い世帯年収(7万5,000ドル)は中央値の約1.5倍だった。

<世帯年収別の家計と満足度>
年収 資産の満足度 総合主観満足度
(幸福度)
回答者数
100万円未満 4.02 5.04 1,064
100万円~300万円未満 3.98 5.21 2,782
300万円~500万円未満 4.44 5.69 4,225
500万円~700万円未満 4.82 5.92 3,310
700万円~1,000万円未満 5.28 6.27 2,616
1,000万円~2,000万円未満 5.86 6.51 1,331
2,000万円~3,000万円未満 6.27 7.00 136
3,000万円~5,000万円未満 6.37 6.94 49
5,000万円~1億円未満 5.61 6.94 18
1億円以上 5.25 6.11 44

出典:内閣府 2020年9月発表「満足度・生活の質に関する調査による第4次報告書」

資産状況に対する満足度と総合主観満足度を比較してみると、幸福の基準値に微差がある。資産状況に対する満足度のピークは年収3,000万~5,000万円と、総合主観満足度のピークより高い。

年収が2倍になっても幸福度はあまり変わらない?

「お金で幸せは買えない」というが、これらの研究結果を見る限り、お金と幸せの関連性は否定できない。

しかし、年収が2倍になると幸福度が2倍、年収が3倍になると幸福度が3倍に増えるわけではない。例えば、年収500万円~700万円の世帯とその2倍である1,000万円~2,000万円の世帯を比較すると、幸福度は0.59ポイントしか変わらない。

さらに驚くべきことに、1億円以上の世帯の幸福度は、700万円以上1億円未満の世帯の幸福度より低い。

幸せの基準は人それぞれ!自分の人生を振り返って

高所得世帯の幸福度が低所得世帯より高い理由として、キリングスワース氏は所得が増えるにつれて「自分の人生を自分の力でコントロールしている」という感覚が増すことを挙げている。例えば、お金が増えるとそれだけ人生の選択肢も増え、さまざまな可能性が広がる。可能性が広がれば人生の充実度がアップし、それが幸福感につながるというわけだ。

とはいうものの、同氏は「人は人生の成功を測る際、お金を重視し過ぎている」と、人生においてお金より大切なものがある点も指摘している。

確かに、幸せの基準は人それぞれである。高年収でも幸せと感じていない人もいれば、経済的な余裕がなくても幸福感に満たされている人もいる。自分の人生を振り返り、生きていることの素晴らしさを実感する。小さなことに感動したり感謝する気持ちがもたらす「幸せ効果」は、多数の研究でも立証されている。

年収に関係なく、自分の心を潤すことが「幸せの条件」ではないだろうか。

Writer

株式会社ZUU

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