コラム
掲載日
2021.3.12

遺言代用信託による遺贈寄付
遺言とは異なる優れた特徴とは

Writer

遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道 氏

前回のコラムでは、寄付に利用可能な信託について紹介しました(前回のコラムはこちら)。今回は、さまざまな種類の信託の中でも「遺言代用信託による遺贈寄付」について、その仕組みや特徴などを「遺言による寄付」と比較しながら紹介します。

遺言代用信託の仕組みと現状

まずは、一般的な遺言代用信託について解説します。遺言代用信託も、他の信託と同じように「委託者」「受託者」「受益者」の三者の関係によって成立しています。ただ、遺言代用信託では「委託者=第一受益者」とし、ご家族等を「第二受益者」(または残余財産の帰属権利者)に指定するところが特徴です。これは、委託者が生存中は委託者が運用益等を受け取り、委託者が死亡した時にご家族等が信託財産を受け取るようにするためです。

遺言代用信託の仕組み

信託した財産は、委託者(ご本人)の財産ではなく受託者(信託銀行等)名義の財産となりますので、委託者が死亡した時に、信託した財産は委託者の相続財産ではないことになります。遺言や遺産分割協議は相続財産について効力を発揮するものですので、信託財産は遺言や遺産分割協議の影響を受けることなく、信託契約のとおりに第二受益者に支払われます。これが「信託は遺言に優先する」と言われる理由です。また、遺言や遺産分割協議による相続手続とも関係ありませんので、死亡時に相続財産が凍結されても、速やかに信託による支払いが実行されることも特徴です。

こうした利点から、葬儀費用の支払い準備資金等として幅広く利用されており、2020年9月末時点で累計184,920件(信託協会集計)が受託されています。単純な比較はできませんが、同じ時点での遺言信託による遺言書保管件数は151,748件(信託協会集計)ですので、これを上回る件数です。その一方で、第二受益者は委託者の家族等に限定されており、非営利団体を指定できないため、遺言代用信託を遺贈寄付に活用することはできませんでした。

遺言による寄付との違い

遺言信託以上に多く利用されている遺言代用信託は寄付に活用できませんでしたが、2019年10月にオリックス銀行が「かんたん相続信託〈遺贈寄附特約〉」を発売し、日本初の「遺言代用信託による寄付」を実現しました。その後、地方銀行も地元の自治体等への寄付を対象とした、類似の商品を取り扱い始めています。

「遺言代用信託による寄付」は「遺言による寄付」に比べて以下のメリットとデメリットがあります。

遺言代用信託による寄付 遺言による寄付
メリット 手続きが簡単で手軽 遺言の作成が必要
必ず遺贈寄付が実現
(中途解約しない限り)
遺言作成後の財産減少等で
遺贈寄付できないこともある
費用が無料または少額 多額の費用がかかる
デメリット 生前に財産の移動が必要 生前に財産の移動は不要
信託財産は金銭のみ 不動産なども対象にできる
想いを伝える手段がない 付言事項に想いを書ける

それぞれの特徴を生かして、寄付の目的や財産内容に応じて使い分けると良いでしょう。例えば、比較的少額の金銭を手軽に遺贈寄付したい場合は「遺言代用信託による寄付」、保有財産全体について将来の財産変動も考慮しながら配分を定める場合には「遺言による寄付」という使い方もできます。

遺言代用信託による寄付をオススメする方と利用場面

「今後の生活もあるので、今は寄付できないけれど、自分が死ぬ時に残ったお金なら寄付しても良い」というご意見を伺います。それには遺言を書くのが一番なのですが、「遺言は面倒」と言われます。このような方にこそ、遺言代用信託はオススメです。

将来の生活や万一の病気などに備えて、日常の生活費とは別に、資金を蓄えている方も多いのではないでしょうか。この資金を遺言代用信託に「預けて」おくのです。信託した資金は自分(委託者)の財産ではなくなりますが、中途解約可能な遺言代用信託を取り扱う銀行もありますので、元本保証で中途解約できるのであれば預貯金のように「預ける」感覚で信託することができます。もし必要な時には解約して資金を取り戻すこともできますし、何もなければ亡くなった時に寄付が実行されます。

ご自身の将来の生活に備えながら、手軽に社会貢献もできる「遺言代用信託による寄付」。一度ご検討されてはいかがでしょうか。

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