コラム

投資信託にはご注意いただきたい事項があります。くわしくは「投資信託の注意事項」をご覧ください。

掲載日
2020.12.13

年金を受け取る年齢上限、75歳に引き上げ。
受給開始に最適な年齢は?

(画像=PIXTA)

2020年度の年金改正法により、2022年4月からは受給開始年齢の上限が75歳へ引き上げられる。高齢化社会のライフプラニングを支援することが目的だ。

受給開始を遅らせる場合、最も気になるのは「在命期間に受け取りきれるか」「何歳で開始すれば得をするのか」という点だ。繰り上げ受給・繰り下げ受給で生じる差を含め、年金の受給年齢について解説していく。

ライフプランに合わせて受給開始の年齢を選べる

まずはっきりとお伝えしておきたいのは、年金法改正後「75歳まで年金をもらえない」わけではないということだ。実際このように誤解している人もいるようだが、実際は人生100年時代に合わせ、受給開始年齢の選択肢が増えるということである。

受給開始年齢は改正前と同じ65歳。現在も実際に受給を開始する年齢は60~70歳の間で選択できるが、改正後は60歳から75歳まで延ばすことができる。

個人のライフプランによって、年金を必要とする時期は異なる。例えば、十分な貯金があり、かつ企業年金や個人年金保険など複数の収入源がある人は、平均より早めのリタイヤを検討するかもしれない。逆に、貯金がまったくなく、リタイヤ後の収入源は国民年金だけという人は、受給開始年齢に達した後もできるだけ長く働き続けることを希望するかもしれない。

そのため、公的年金は個人のライフプランに合わせて請求することで、繰り上げ・繰り下げが可能な仕組みになっている。

繰り上げ受給と繰り下げ受給、どれぐらい差が出る?

年金を早くもらう「繰り上げ受給」では、開始年齢を1ヵ月早くするごとに0.5%(※)(年間6%) 受給額が減り、遅くもらう「繰り下げ受給」では、1ヵ月遅くするごとに0.7%(年間8.4%)増える。

例えば65歳で300万円の年金をもらえる人が60歳で受給を開始した場合、以下の計算のように年間受給額は210万円に減額される。

例1 300万円-300万円 ×30%(6%×5年)=210万円

しかし75歳まで受給開始を遅らせると、年間552万円を受け取ることができる。

例2 300万円+300万円×84% (8.4%×10年)=552万円

つまり60歳で開始するか75歳で開始するかによって、342万円も差が出るわけだ。

ただし、年金が増額されると1年間の収入も増えることになり、その分納める税金も高くなる点には注意が必要である。

※繰り上げ減額率は2022年4月1日以降、60歳に達する方を対象として、1カ月あたり0.4%に改正予定。

受給年齢を変更するメリット・デメリット

長く待つほど受給金額が大きくなるのは魅力的だが、「何歳まで生きられるか分からないから、早く受給を開始した方が得ではないか」と考える人もいるだろう。

しかし、自分の寿命がわからないからこそ、安易に結論に飛びつく前に、受給年齢を変更するメリット・デメリットをしっかりと比較して慎重な判断を下したい。

平均余命では「繰り下げ」は損?

まずは令和元年の簡易生命表から、平均的な余命を見てみよう。60歳の人の平均余命は男性で23.97年(前年比0.14増)、女性で29.17年(0.13増)。75歳から受給を開始すると、男性の受給期間は約9年、女性は約14年しか年金を受けとれないという計算になる。

これらの数字はあくまで平均余命であるため、個人差はあるものの総体的に見ると損をする確率の方が大きい印象を受ける。

「損益分岐点」繰り上げ・繰り下げで損得をするのは何歳から?

次に損益分岐点の観点から見てみよう。開始時期を遅らせるほど、受給額が増えるのはすでに説明した。しかし裏を返せば、本来は受けとれるはずの年金を、その間まったく受け取れないということだ。仮に75歳まで遅らせて、76歳で他界した場合などは大損である。

それでは「繰り下げ受給」で損をしないためには、どれぐらい長生きをすれば良いのだろう。仮に75歳まで繰り下げた場合、65歳から受給を開始した場合に受け取れる総額とほぼ同等にするためには、約11年10ヵ月を要する。つまり87歳を超えて長生きすれば、繰り下げ受給の恩恵を受けることができる。

では「繰り上げ受給」ではどうか。先ほどの300万円を例に考えてみると、60歳で受給を開始した場合、18年後には65歳で受給を開始した場合に受け取れる総額を下回ることになる。つまり78歳以降は、長生きするほど繰り上げたことを後悔するかもしれないということだ。

自分の老後プランに合わせた受給年齢を選択しよう

日本では高齢になっても心身ともに健康で、まだまだ働きたいという人が増えている。

経済協力開発機構(OECD)の予想によると、65歳以上の高年齢者が日本の労働市場を占める割合は、2030年には30%を超える。これはOECD加盟国中最も高い割合で、ルクセンブルグの5倍、オーストリアやベルギーの3倍、オーストラリアやオランダの2倍に匹敵する。

「在職老齢年金」の支給停止範囲が見直されたことも、高齢者の就労を後押しする要素の一つとなるだろう。

在職老齢年金とは、働きながら受け取れる、60歳以上を対象とする厚生年金のことだ。改正前は、60代前半の在職者は賃金と年金の合計額が月額28万円を超えると支給が停止されたが、改正後は60歳台後半の在職者と同じ水準の月額47万円に引き上げられる。

繰り返しになるが、自分が何歳まで生きるかはまったくわからない。そのことを考慮すると、損得で受給開始年齢を決めるより、自分の老後プランに合わせた受給年齢を選択することが最も賢明なのかもしれない。

Writer

株式会社ZUU

家族や友達にシェアする

コラムの注意事項

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、当社にて取り扱いのない商品に関する内容も含まれています。

当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。

外部有識者の方にも本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。

本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。

ページの先頭に戻る