コラム
掲載日
2020.11.27

投資眼では見えないものが、経営眼なら見えてくる
~経営者目線で賃貸リスクを管理する~

Writer

児玉 晋 氏

投資対象としての不動産の運用においては、不動産投資と不動産経営という言葉が混在しています。一般的には、アパートといえば「経営」、ワンルームマンションといえば「投資」という言葉が使われているように感じます。そもそも投資と経営は異なるものですが、不動産の運用においては混同されているケースが多く見受けられます。

今回は、不動産の運用を不動産投資ではなく、不動産経営という言葉で捉えることで、投資眼では見落としがちなリスクの存在を考察します。

それは投資なのか経営なのか

同じ投資対象でも、一般投資家における株式はまさに投資であり、経営者や従業員として企業運営に関わるわけではありません。この場合、投資家の期待といえば値上がり益と配当でしょう。不動産においても、REITなどの証券化商品の投資主は、その運営に関わることはありません。これが一般的な投資家としての姿でしょう。

一方で不動産の運用にご興味をお持ちの方の多くは、不動産事業を行う経営者になろうとしているのではないでしょうか?

投資眼では見えないものが、経営眼なら見えてくる

不動産事業の経営者として考えてみると、対象不動産を見る目も少し変わってくるかもしれません。代表的な視点をいくつか挙げてみましょう。

経営視点① 誰に貸すか

不動産経営における主たる収益源は賃料です。当然ですが、賃料は借り主が支払ってくれます。つまり、どの不動産を買うかということと同じくらい、誰にいくらで貸すかという経営要因に目が向きます。実際には募集してみなければわからないものの、エリアや物件により代表的な賃借人像は想定できますので、その不動産が存在する駅や街、住民の特性、賃料相場に目が向くことでしょう。

これらの分析は、事業会社に置き換えると「売り上げ予測」にあたります。売り上げの上限はおのずと決まりますが、空室リスクの想定は経営者によって異なります。リスクの許容度をどの程度見込むかは経営者次第ですが、必然的に財務の安全性に目が向くことでしょう。

経営視点② コストは?

不動産収入は不労所得とはいえ、利益率100%とはいきません。売り上げを獲得するための費用として、ほぼ確実にかかる費用は把握しておかなければなりません。修繕費や管理費などは比較的見えやすい費用ですが、見落としがちなのが税金です。所得税などは利益にかかる税金なので、1年の会計期間が終了した後に精算するものですが、固定資産税などは経営状態にかかわらずにかかる費用です。費用の見積もりを正確に行うためには、物件購入時に見落とすわけにはいきません。

ここまでの売り上げと費用の分析を行うことは、つまり利益予測をしていることになります。利益の金額が経営者の成績と考えれば、好成績を収めたいものです。

経営視点③ 何年やるか

資金を不動産で運用するにあたり、この先どれくらい不動産事業をやるのかという想定も重要です。非常に困難な意思決定ですが、それにより売却の想定が異なり、収益のシミュレーションが雑になるため、仮にでも10年や20年といった年数を決めるとリスクが見えやすくなります。また、期間を想定しないのであれば、相続対策に目を向ける必要が出てくるでしょう。

そして、年数を決める、決めないにかかわらず、やむをえず途中で断念するのは避けたいところです。事業会社でいう倒産です。これを避けるためのポイントとして、損益計算とキャッシュフローのずれを把握し、絶対に支払期日を守ることです。

具体的には、不動産経営におけるメリットの一つでもある減価償却費のルールを徹底的に理解し、税法上の利益(所得)と現金残高のずれを理解することです。一般的には、経営初期のころは、節税効果により名目上の利益(所得)以上に現金が多くなりますが、借り入れが多い場合などは将来の支出に備えて手元現金を多くするなど、財務安全性の管理は必須といえます。

以上の他にも災害や金利上昇、その他のリスクを思い浮かべた方もいらっしゃるでしょう。こと、不動産の運用においては、投資家目線が強くなりすぎると「利回り」に過度に目が行きがちです。さらに、経営者目線でシミュレーションしたとしても、街・人・ライフプラン等は常に変化し続けます。下ぶれのリスクを考えすぎるのも善し悪しですが、結局は当初の将来予測とその後のずれに適切に対応できた方が、優秀なオーナー経営者だったといえるのでしょう。

さて、不動産の運用にご興味をお持ちの皆さまは「投資家」になりたいのでしょうか、それとも「経営者」になりたいのでしょうか。それを決めることがはじめの一歩になるかもしれません。

児玉 晋 氏

Writer

児玉 晋 氏

日本FP協会認定(CFP®)

日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)

宅地建物取引士

一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構 副代表、TAC株式会社ファイナンス講座企画部長。

投資関連のセミナー・イベント企画および講義講演、書籍執筆などの傍ら、自身でも不動産を所有して大家さんを実践。経験に基づく情報発信を積極的に行っている。

家族や友達にシェアする

コラムの注意事項

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、当社にて取り扱いのない商品に関する内容も含まれています。

当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。

外部有識者の方にも本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。

本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。

ページの先頭に戻る