節約に励むのもいいが、今しかできないイベントもある

2018年5月28日

人生100年時代となりつつある今、現役世代からリタイア世代まで皆が老後に向けて準備を加速させようとしています。リタイア世代まで?と思われるかもしれませんが、かつて百歳の双子の「きんさん、ぎんさん」がCMに出た謝礼を「将来に備えて貯金します」と答えました。そのようにリタイア世代が将来に備えるために貯蓄をしても、何ら不思議ではないのです。また、長い老後を見据えれば、早めの準備が大切だということで社会人になったそばから老後の準備を始める人が増えていると言われています。

老後資金の準備を優先しすぎていないか?

とはいえ、現役世代は思っているほど収入が増えていませんし、リタイア世代の年金受給額も物価の上昇ほど増えてはいません。したがって、節約に励むなどして老後のための資金を捻出して、積立貯蓄や積立投資、あるいは個人年金保険などに加入しコツコツと準備を進めていくわけです。

節約などを含めた家計のやり繰りで資金を捻出するのは至極もっともな方法と言えますが、その老後資金の準備、あまりにも遠い将来のライフイベントを優先しすぎてはいないでしょうか。今しかできないライフイベントを疎かに(節約の対象に)していませんか?と問いたいのです。

楽しい想い出がない老後は後悔が大きくなる

たとえば、「家族旅行」。家庭によってそれぞれだと思われますが、子どもが成長するに従って家族全員が揃って旅行に出かける機会は少なくなるはずです。子どもが小学生ならまだしも、中学校、高校へと進学するにつれて、旅行に行く子どもがひとり抜け、ふたり抜け……となり、気がついたときには夫婦だけの旅行になっていたという人も少なくないはずです。いざ家族での想い出を作ろうと思ったときには、すでに子どもは一緒に行ってはくれないということが往々にしてあるのです。

子どもの成長は早いうえ、大きくなるに従い一緒に旅行へ行ってくれなくなるのであれば、最も遠いライフステージとなる老後の準備にためにせっせと節約に励むよりも、節約の手を緩めて想い出作りにお金を使ってみてはいかがでしょう。毎月の支出から捻出するのが難しいようであれば、夏冬のボーナスから旅行資金を捻出するのでも構いません。子どもと家族旅行へ一緒に行ける期間は、実は意外と短いものなのです。

楽しい想い出は老後になっても色あせることはありませんが、楽しい想い出がないと老後の後悔はより大きなものになってしまうかもしれません。老後になれば、子どももまた一緒に旅行へ行ってくれるようになる(娘さんに多いようです)かもしれませんが、すでに子どもは成人となっています。それはそれで楽しいかも知れませんが、子どもの成長過程で行った家族旅行は別格という声が多いのも事実です。老後の準備はしなければいけませんが、現在の楽しみとして「家族旅行費」は節約の対象外(聖域)として常に残して、毎年の想い出作りに当ててみてはいかがでしょうか。

老後のために準備した資金を宝の持ち腐れにしてはいけない

家族旅行といえば、リタイア後の旅行についても一言申し上げておくことにしましょう。リタイア後にやりたいことを見聞きすると圧倒的に多いのが「旅行」です。現役世代の想い出作りの旅行とはやや趣が異なり、時間がたくさんある分、現役時代に行くことができなかった旅行を実現させたいケースが多いようです。もちろん、子ども、あるいはお孫さんを連れた二世代、三世代の家族旅行というのもありますが、ここではあえて外させていただきます。

たとえば、世界遺産を巡る旅行です。ペルーの「マチュピチュ遺跡」、エジプトの「ギザの三大ピラミッド」など有名なものがたくさんありますが、それらへ行く旅行をイメージしてみてください。国内であれば「春夏秋冬」を巡る旅行などもその範疇に入るかもしれません。これらの旅行は、老後資金に余裕があったとしてもリタイア後の早い時期に行くことをお勧めします。なぜなら、歳を重ねるごとに気力や体力が衰えてしまい、歳を重ねれば重ねるほど行ける確率が低下していくからです。

今の高齢者は元気だと言われますが、自分が歳を重ねて必ず元気な高齢者でいるとは限りません。平均寿命と健康寿命の間には、男性で約8年、女性で約12年(2016年厚生労働省調べ)あるのです。つまり、歳を重ねるほど資金面ではなく、気力体力面がついていかず、世界遺産巡りなどに行けなくなってしまうのです。二世代、三世代が一緒の家族旅行は体力が低下し始めてからでも、充実させることはできます。リタイア後は、思い立ったが吉日と考えて現役時代にできなかったことを実現させましょう。なぜなら、リタイア後は現役時代に備えてきた(種をまき育ててきた)資金を使う(刈り取る)時期。現役時代と比較して時間はたっぷりあると思われるかもしれませんが、気力・体力面がついていかなくなるケースが多々あるのです。

何歳まで生きるかを自分でコントロールすることはできないので、いつの時代も無駄遣いはよくありませんが、少なくとも現役世代よりもリタイア世代はお金を使うこと、言い換えれば金融資産を取り崩すことをためらったり、躊躇しすぎたりしてはいけません。ためらい、躊躇をしてしまうと現役時代に頑張って準備してきた老後資金が宝の持ち腐れになり兼ねないのです。現役世代、リタイア世代共に、節約することも大切ですが「今しかできないイベントにはお金を使う」というバランス感覚を持つことが、豊かな生活を過ごすためのカギになると思われてならないのです。

プロフィール

深野 康彦(ふかの やすひこ)
有限会社ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー

1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴29年(2017年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。BSジャパン「日経モーニングプラス」毎月1回出演。日経CNBC「夜エクスプレス」では水曜日のアンカーを担当。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。

主な著書
『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社)
『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)など多数
新著
『55歳からはじめる、長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版)
『本当は危ない あなたの毎月分配型投資信託』(ダイヤモンド社)

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